THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

ポリコレ

『透明人間』

ポール・バーホーベン監督でケビン・ベーコン主演の『インビジブル』は、子供のころに金曜ロードショーかなにかでテレビ上映していたのをたまたま親と一緒に観たのだが、あまりにエログロが多くて非常に気まずくなったという嫌な思い出しかない。 大人気漫画…

ホラー映画と、セックスに対する懲罰(『イット・フォローズ』)

イット・フォローズ(字幕版) 発売日: 2016/06/22 メディア: Prime Video コロナ騒ぎが起こる前の今年の初頭に『ミッドサマー』がTwitterでアホみたいな騒がれ方をしたことは記憶にあたらしいが、あの作品は単にフックとなる要素が多くてTwitterで映画作品を…

ひとこと感想:『29歳からの恋とセックス』&『五瓣の椿』&『チェイシング・エイミー』

●『29歳からの恋とセックス』 29歳からの恋とセックス (吹替版) 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video グレタ・ガーウィグが主演ということで観たが、タイトル通り、29歳になっても人生の方向性が決まらず、高校の頃から付き合っていて婚約までいった唯…

ポリコレは物語の質を上げて多様性を確保する…のか?

theeigadiary.hatenablog.com theeigadiary.hatenablog.com 以前にも似たようなことを書いているが、改めて。今回は特に長い。 ●まえおき ネットでは「創作物とポリコレ」とか「表現規制とポリコレ」という話題は定期的に盛り上がる。それも、数ヶ月に一度ど…

ひとこと感想:『ディア・グランパ:幸せを拾った日』、『雨に願いを』、『アドバンテージ:母がくれたもの』

毎年、梅雨の時期になると体調が悪くなって頭痛や倦怠感に苛まれる。今年は飲酒量をかなり抑えているので例年よりかはマシなのだが、それでも、朝に起きた時点で曇り空でジメジメしている日は気分も晴れずに頭もまわらない。 毎日朝と晩に映画を見ることを習…

ひとこと感想:『アス』、『犬神家の一族』、『ベイビー・ドライバー』、『モンスター上司』

●『アス』 アス (字幕版) 発売日: 2020/02/07 メディア: Prime Video 『ゲット・アウト』がつまらなかったのでこちらは劇場公開時はスルーして、思ったよりも早くprime videoで配信されたからそれで見てみたが、案の定つまらない。本国でも多数の人が思って…

ひとこと感想:『アリー/スター誕生』『シントイア・ブラウン: 裁きと赦し』『成果』

●『アリー/スター誕生』 アリー/ スター誕生(字幕版) 発売日: 2019/04/03 メディア: Prime Video なんかやたらと古臭いストーリー展開だなと思ったら大昔の映画のリメイク作品であると知って、さもありなんと思った。 アリー(レディー・ガガ)の歌を聞いた…

『20センチュリー・ウーマン』

20 センチュリー・ウーマン(字幕版) 発売日: 2017/11/22 メディア: Prime Video 1970年代のカリフォルニア州サンタバーバラを舞台に、シングルマザーのドロシー・フィールズ(アネット・ベニング)とその息子のジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)、…

『ファーザーズ』

ファーザーズ (字幕版) 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video このブログでは近頃のハリウッド映画が「リベラル」で「先進的」な価値観に基づいた作品ばかり作っているためにどれもこれも同じようなメッセージや描写になっていて逆に多様性が無くなって…

『おとなの事情、こどもの事情』

www.netflix.com ニューヨークのブルックリンに住んでいた、料理批評家であり著作もあるアフリカ系の夫(ネルサン・エリス)とフェミニズム理論に基づいた作品を制作する芸術学者(メラニー・リンスキー)といういかにもインテリな夫妻が、キャリアの事情で…

『魔法にかけられて』

魔法にかけられて (字幕版) 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video おとぎ話の国・アンダーレシアで動物たちと一緒に森の奥で暮らしていたプリンセスのジゼル(エイミー・アダムス)は、いつかプリンスと出会ってキスをして結婚をすること夢見ていた。そ…

『リメンバー・ミー』

リメンバー・ミー (字幕版) 発売日: 2018/05/29 メディア: Prime Video 2017年(日本公開されたのは2018年)とわりと最近に公開された、メキシコ文化をフィーチャーしたピクサー作品。テーマやメッセージ性を強調した作風であるため、観ている間はてっきりデ…

『ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから』

www.netflix.com 5歳の頃に父親とともに中国からアメリカに移民してきたエリー・チュウ(リーア・ルイス)は高校生の頃には中国人らしい秀女となっており、駅舎で働いたり同級生たちの授業の課題レポートを代筆するアルバイトをしたりして日銭を稼ぐことで家…

『ズートピア』

ズートピア (字幕版) 発売日: 2016/07/11 メディア: Prime Video ピクサーの作品にうんざりしていたところで『塔の上のラプンツェル』を見て「やっぱりディズニー本家はひと味違ったレベルの高い作品を作るなあ」と感心していたところだが、ラプンツェルの監…

『月影の下で』

www.netflix.com 1988年のフィラデルフィアにて、バスの運転手や料理人やピアニストなど、それぞれの関連性のない人物が同じタイミングで鼻や口や耳から血を流して突然死する、という事件が起きる。被害者たちのうなじには、注射のようなものを刺された跡が…

『37セカンズ』:"障害者の主体性や自立心"を描いた作品ってもう珍しくないよね

www.netflix.com 脳性麻痺で下半身が動かず車椅子で生活している身体障害者であり、人気漫画家のゴーストライターとして漫画を描きながらもいつかは自分の名前で堂々とデビューすることを望む貴田ユマ(佳山明)が主人公のお話。 近頃では「障害者もの」フィ…

ブラック・ウィドウは「冷蔵庫の女」か?

アベンジャーズ/エンドゲーム(字幕版) 発売日: 2019/09/04 メディア: Prime Video ちょうど1年前の話題になってしまうが、MCU作品を一気に見返しているうちにちょっと考えてみたので書いてみよう。 以下は『アベンジャーズ/エンドゲーム』や『アベンジャ…

『ブラックパンサー』

ブラックパンサー (字幕版) 発売日: 2018/04/27 メディア: Prime Video この作品はMCUのなかでも特に海外では大ヒットした作品であり、興行収入はヒーロー全員集合の『アベンジャーズ』を除けばトップクラスのはずだ。一方で、日本においては、ヒーロー映画…

Twitterにおける映画感想がダメなものになりがちな理由

theeigadiary.hatenablog.com 昨日はノア・バームバック監督の『イカとクジラ』を観た。映画自体は大したものではなかったしむしろ不愉快なくらいの作品であったが、上記の記事で書いたように、この映画に関する「みんなのシネマレビュー」の批評を眺めてい…

『ブラック・クランズマン』

ブラック・クランズマン (字幕版) 発売日: 2019/10/09 メディア: Prime Video Amazon primeで無料になっていたから初視聴。公開当時は見に行くかどうか迷っていたのだが、上映館が少なくて不便だったのと「なんか重い内容だったら嫌だなあ…」という気持ちが…

『ボギー!俺も男だ』:1970年代の作品だが、「有害な男らしさ」がテーマ?

ボギー!俺も男だ (字幕版) 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video 1972年の作品。ウディ・アレンが主演でダイアン・キートンがヒロイン、という『アニー・ホール』的な組み合わせ。監督はハーバート・ロスという人だが、wikiを見たところウディ・アレン…

Netflix(US)的価値観が良いことなのか?

ポジティブ病の国、アメリカ 作者:バーバラ・エーレンライク 発売日: 2010/04/10 メディア: ハードカバー このブログをはじめてから「あの映画はポリコレ要素のせいでマイナスになった」「この映画はフェミニズムの主張が強すぎてつまらない」ということばっ…

『レ・ミゼラブル』(2019):『レ・ミゼラブル』は関係ありません

ヨーロッパ映画には全体的に苦手意識を持っているのだが、このあいだNetflixで観た『ザ・スクエア 思いやりの聖域』はそれなりに面白かった。いまは失業中だが、仕事を再開するとおそらく難解で深刻なヨーロッパ映画を見る気力は失われてしまって、エンタメ…

外在批評の映画ファン/内在批評の漫画ファン

グリーンブック(字幕版) 発売日: 2019/10/02 メディア: Prime Video 今年のアカデミー賞作品賞は『パラサイト 半地下の家族』が受賞したが、元々の『パラサイト』の世評が高かったのとアカデミー賞で初のアジア映画(外国語映画)の受賞ということで世間では…

「優しくない笑い」の面白さ(名作シットコム紹介(2):『となりのサインフェルド』)

ソフトシェル となりのサインフェルド VOLUME 3 [DVD] 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 発売日: 2014/11/26 メディア: DVD 日本で有名なアメリカのシットコムといえば、みつ昔前なら『フルハウス』、ふた昔前なら『フレンズ』、ひ…

「虐げられた女性同士が連帯して男性社会に復讐する映画」を私が苦手とする理由

お嬢さん(字幕版) 発売日: 2017/08/21 メディア: Prime Video タイトル通り、「虐げられた女性同士が連帯して男性社会に復讐する映画」というものが世の中にはいくつか存在しており、私はそれが苦手だ。その理由は、端的に言ってしまうと、私が男性であり復…

『キャプテン・マーベル』:「フェミニズム映画」と「ヒーロー映画」は両立するのか?

キャプテン・マーベル (字幕版) 発売日: 2019/06/05 メディア: Prime Video 『キャプテン・マーベル』は、一つのアクション映画やエンタメ映画として見てみると、世間的にもさほど評価されていないようである。アクションやエンタメとして明確な欠点があるわ…

「格差社会映画」の白々しさ

ずっと昔のイラク戦争のころ、爆笑問題の太田光がなにかのエッセイで、ベトナム戦争のあとにあれだけ反戦映画を製作したのに懲りずにまた戦争を起こして、そしてイラク戦争のあとにまたまた反戦映画が作られる、という状況について批判していた。該当のエッ…

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』:ダラダラした展開はキツいんだけどアダム・ドライバーはよかった

私がはじめて一人で劇場まで行って観た映画は、テリー・ギリアム監督の『ローズ・イン・タイドランド』である。その当時は高校二年生で爆笑問題の太田光の著作にハマっており、太田がラジオか何かで『ローズ・イン・タイドランド』をお薦めしていたから影響…

『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』:犯人がバレバレなのはいいんだけど、ポリコレ要素が不愉快

ミステリーといえば「誰が犯人か?」ということを頭をひねって推理する知的な面白さを連想するものだが、実は、ミステリーには別の種類の面白さもある。それは、自分勝手な理由で相手を殺したうえに自分の罪を他人になすりつけて素知らぬ顔をしている犯人の…