THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

批評

2021年:映画ベスト10&ワースト5

感想記事を書いた映画については感想記事へのリンクを貼ってます。『ドント・ルック・アップ』と『ラストナイト・イン・ソーホー』の感想記事もそのうち書く。 1位:フリー・ガイ 2位:モーリタニアン 黒塗りの記録 3位:ラストナイト・イン・ソーホー 4…

『ザ・ベビーシッター』&『ザ・ベビーシッター ~キラークイーン』

www.netflix.com www.netflix.com 『ザ・ベビーシッター』のほうは、たしか2017年くらいに「エッチなシーンあるかなあ」と思って序盤に早送りしたけれどエッチなシーンはなさそうだったから見るのやめた。今回はハロウィンということで、『~キラークイーン…

『コブラ会』の男らしさ

theeigadiary.hatenablog.com 『コブラ会』、実に面白いのでシーズン3まであっという間に見てしまった。 シーズン2からは、登場人物たちのしょうもない三角関係や、会話や情報伝達が不足によるくだらない誤解による大騒動と悲劇、映画だったらすぐに解決し…

『刑事コロンボ』

刑事コロンボ 完全版 コンプリートDVD-BOX ピーター・フォーク Amazon わたしが映画を本格的に見始めたのは高校2年生の春休みからなんだけど、当時はミステリーファンでもあった。それで『刑事コロンボ』を見始めたのは高校3年生の夏休みからだ。『ジョジ…

『ミスティック・リバー』

ミスティック・リバー (字幕版) ショーン・ペン Amazon 最初に観たときはたしか20歳だったので12年ぶりの再視聴だが、イーストウッドの作品群のなかでも『チェンジリング』や『グラン・トリノ』並みに出来がよくて記憶に残る内容の作品であり、特にクライマ…

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』:ボンドが「有害な男らしさ」から脱却しちゃった

一年半も公開が引き延ばされたクレイグボンドの最終作を、満を持して鑑賞。事前にPrimeVideoで007シリーズが前作配信されたことでクレイグボンドの過去作品を観返すことができて、ヒロインのバックグラウンドとか「ミスター・ホワイト」というキャラクターが…

『フィアー・ストリート』三部作

www.netflix.com 一作目を観たところで男性キャラクターの扱いの悪さとレズビアン推しにイヤな予感がして、検索したところ案の定、「ホラー映画のミソジニー性や異性愛規範」を批評的に反転させてシスターフッドやフェミニズムを描いているなんたらかんたら…

『黒い司法』&『マ・レイニーのブラックボトム』&『42~世界を変えた男~』

theeigadiary.hatenablog.com 「白人に都合のいい物語」ばっかり見るのもよくないなと思って、もっとまじめに人種差別の問題に取り組んでいそうな映画をいくつか見た。 しかし、差別の問題について"真剣に"とか"都合の良さを抜きに"取り組むことって、やはり…

『ドライブ・マイ・カー』(+『マディソン郡の橋』)

中盤までは展開がそれなりに予測できず、それなりにオリジナリティのある絵面が多く、新鮮味があって楽しい。手話を含む多言語が飛び交う「台本」読みのシーンや、韓国人夫婦の家にお呼ばれして食事をするシーンなどは他の映画ではほとんど見ることのないよ…

『TENET テネット』:設定や構成が難しいのは置いておいて、人間ドラマやテーマが描けていない

コロナ禍による大作映画の公開延期と『TENET テネット』公開前の盛り上げということが重なって、2020年は7月からノーランの過去作品のIMAX上映が続いた。 もともと自分のなかの生涯ベスト級作品であった『ダークナイト』はIMAXで観てみるとこれまでとは…

『ミリオンダラー・ベイビー』:安楽死映画とか障害者差別映画とかじゃねえんだよ

ミリオンダラー・ベイビー (字幕版) 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video 『グラン・トリノ』劇場公開当時、朝っぱらから大学の図書館でこの作品を観て、夜になってから劇場まで『グラン・トリノ』を観に行った思い出がある。というわけで12年ぶりの再…

『ブックスマート:卒業前夜のパーティーデビュー』:「誰も傷つけない笑い」が排除するもの

カリフォルニアのハイスクールに通うモリー(ビーニー・フェルドスタイン)とエイミー(ケイトリン・ディーヴァー)は、良い大学に進学するために遊びには目もくれずに勉強に明け暮れていた。その甲斐もあってモリーはイェール大学への進学が決定していたし…

価値づけとしての批評と、その楽しさ(読書メモ:『批評について:芸術批評の哲学』)

批評について: 芸術批評の哲学 作者:キャロル,ノエル 発売日: 2017/12/01 メディア: 単行本 『批評について:芸術批評の哲学』は2年ほど前に図書館で借りて読んではいたが、今年になってからこうして映画ブログをはじめて「批評」活動をはじめたということも…

『プロメア』:寒々しさが付きまとう“熱血”アニメ映画

プロメア 発売日: 2020/05/24 メディア: Prime Video 突然変異して身体から炎を発火して操れるようになった新人類「バーニッシュ」の登場により人口の半分が亡くなる事件が起こってから30年後、バーニッシュへの対策が行われて文明がやや発展した世界におけ…

ホラー映画と、セックスに対する懲罰(『イット・フォローズ』)

イット・フォローズ(字幕版) 発売日: 2016/06/22 メディア: Prime Video コロナ騒ぎが起こる前の今年の初頭に『ミッドサマー』がTwitterでアホみたいな騒がれ方をしたことは記憶にあたらしいが、あの作品は単にフックとなる要素が多くてTwitterで映画作品を…

『胎界主』

www.taikaisyu.com 2005年よりインターネットで連載されている、完全フルカラーの、非商業の無料公開マンガ。2017年に「第二部」が完結してからもサイト上では短編作品の連載は行われていたが、 『胎界主』本編の更新はしばらく中止されていた。しかし、数ヶ…

ポリコレは物語の質を上げて多様性を確保する…のか?

theeigadiary.hatenablog.com theeigadiary.hatenablog.com 以前にも似たようなことを書いているが、改めて。今回は特に長い。 ●まえおき ネットでは「創作物とポリコレ」とか「表現規制とポリコレ」という話題は定期的に盛り上がる。それも、数ヶ月に一度ど…

『東京物語』

東京物語 ニューデジタルリマスター 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video この作品を最初に見たのは(例によって)10年以上前の大学生の頃だ。立命館大学の図書館には視聴覚コーナーがあって、けっこう気軽にDVDをその場で借りて見ることができたので…

『連ちゃんパパ』

凪待ち 発売日: 2020/02/20 メディア: Prime Video Twitterで話題になっていて、無料で読めるということもあり、ついつい最後まで一気読みしてしまった。 togetter.com 上記のTogetterの題名をはじめとして、Twitterでは「連ちゃんパパを読んだうえで、主人…

物語における「現代の価値観で過去を裁く」ことについて

「死んでしまえばそれまで」と言えばそれまでだが…今のお偉いさん達って「自分が後世の漫画家や映画作家に、ずっと悪役として描かれる」ことの恐怖ってないのかしら。百五十年前に「黒人や女に投票権を与える?本気かよ?」と言った米国の政治家達。みんな写…

わたしが「続きものドラマ」が嫌いな理由

#5 インサイドストーリー(字幕版) メディア: Prime Video このブログでは以前に『となりのサインフェルド』や『そりゃないぜ!?フレイジャー』を紹介したことがあるし、他にも『フレンズ』などのシットコムは好きである*1。また、10代の頃には『刑事コロ…

HBOドラマ版『ウォッチメン』

ウォッチメン 無修正版 ブルーレイ コンプリート・ボックス (1~9話・3枚組) [Blu-ray] 発売日: 2020/06/03 メディア: Blu-ray そもそもわたしは「続きものドラマ」全般が苦手なのであるが、それについは後日の記事でたっぷりと文句を書く予定だ。 わたしは『…

「アベンジャーズ」関係作品(MCU映画):ランキングと総評

アベンジャーズ (吹替版) 発売日: 2013/12/19 メディア: Prime Video まず、MCU映画の私的なランキングは以下の通りになる。ランキングの基準は「個人的な好み」「客観的なクオリティやレベルの高さ」に加えて「単独作品としての完成度の高さ」である。いく…

ブラック・ウィドウは「冷蔵庫の女」か?

アベンジャーズ/エンドゲーム(字幕版) 発売日: 2019/09/04 メディア: Prime Video ちょうど1年前の話題になってしまうが、MCU作品を一気に見返しているうちにちょっと考えてみたので書いてみよう。 以下は『アベンジャーズ/エンドゲーム』や『アベンジャ…

Twitterにおける映画感想がダメなものになりがちな理由

theeigadiary.hatenablog.com 昨日はノア・バームバック監督の『イカとクジラ』を観た。映画自体は大したものではなかったしむしろ不愉快なくらいの作品であったが、上記の記事で書いたように、この映画に関する「みんなのシネマレビュー」の批評を眺めてい…

『イカとクジラ』

イカとクジラ (字幕版) 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video 『マリッジ・ストーリー』と同じく、ノア・バームバック監督が「離婚」を題材にした作品だ。ただし、『マリッジ・ストーリー』では離婚をする夫婦二人の関係に焦点が合わせられていたのに対…

『インヒアレント・ヴァイス』

インヒアレント・ヴァイス(字幕版) 発売日: 2015/08/19 メディア: Prime Video 前回の無料期間が終わる直前にU-NEXTを解約して、数ヶ月じっと我慢していたらついにU-NEXTから「また一ヶ月だけ無料期間を体験させてあげるよ」というメールが届いたのですぐに…

Netflix(US)的価値観が良いことなのか?

ポジティブ病の国、アメリカ 作者:バーバラ・エーレンライク 発売日: 2010/04/10 メディア: ハードカバー このブログをはじめてから「あの映画はポリコレ要素のせいでマイナスになった」「この映画はフェミニズムの主張が強すぎてつまらない」ということばっ…

『ザ・スクエア 思いやりの聖域』:豊かな知識人による豊かな知識人のための「格差社会」映画

ザ・スクエア 思いやりの聖域(字幕版) 発売日: 2018/09/21 メディア: Prime Video Netflixで視聴した。ヨーロッパ映画を見るのは久しぶりだ。Wikipediaを見たところスウェーデンやデンマークなどの北欧で製作された映画のようだが、作中ではスウェーデン語…

村上春樹の『沈黙』:なぜ人は物語を相対主義的に読解したがるのか?

沈黙 (集団読書テキスト (第2期B112)) 作者:村上 春樹 出版社/メーカー: 全国学校図書館協議会 発売日: 1993/03/01 メディア: 単行本 この作品は学校教育の現場で集団読者や読書感想文の題材として選ばれることも多く、その内容を知っている人は多いだろう。…