THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『ブラック・クランズマン』

 

ブラック・クランズマン (字幕版)

ブラック・クランズマン (字幕版)

  • 発売日: 2019/10/09
  • メディア: Prime Video
 

 

 

 Amazon primeで無料になっていたから初視聴。公開当時は見に行くかどうか迷っていたのだが、上映館が少なくて不便だったのと「なんか重い内容だったら嫌だなあ…」という気持ちがあって見に行かなかった。

 スパイク・リーの作品を視聴するのはこれが初めてだったのだが、『グリーンブック』に対する抗議騒動もあって、人種差別を糾弾する堅苦しい社会派の映画だと思っていた。しかしいざ見てみると全然そんなことなくて、本編はユーモアもありサスペンスもほどほどにあってと娯楽映画的な内容に仕上がっている。一方で、ラストシーンでは実際の映像を用いられながら米国社会の人種差別が批判されるが、ここでは政治的メッセージがストレートに示される。本編からのラストシーンの繋げ方は唐突感があまりに強過ぎてお世辞にもうまいと言えるものではないが、逆にいえば、政治的メッセージをラストシーンに押し込められることで本編それから切り離されて、純粋にストーリーやキャラクターが楽しめる映画となっている、と言えるだろう。

 

 KKKに潜入するアダム・ドライバーは白人ではあるがユダヤ人であり、そのことがバレるかバレないかのシーンがこの映画で最もスリルのある箇所となっている。KKKのキャラクターも多様であり、「過激派」もいれば「良識派」もいることが潜入シーンを飽きさせないものにしている。例によって間抜けなキャラを演じさせられるポール・ウォルター・ハウザーも印象的だ。

 主人公が所属する警察の側も、主人公に協力的な人物もいれば敵対的な人物もいて、という感じの描き方となっている。また、物語の冒頭で黒人の「過激派」の集会に主人公が潜入するシーンや、社会活動家である主人公の恋人が映画を重層的なものにしている。

 ただし、サスペンスシーンに緊張感があったり最後に政治的メッセージが投げかけられるとはいえ、全体のつくりとしてはかなり「ゆるい」ところも感じられる。そもそもの前提である「電話は黒人刑事が担当、潜入して実際に会うのは白人刑事が担当」という設定が、実話がそうであるからしょうがないとはいえ、映画の全体の展開をぎこちないものとしている。主役はジョン・デヴィッド・ワシントンであるが作中で主に危機にさらされるのはアダム・ドライバーであるため、それぞれのパートが微妙に噛み合っていないところがあるのだ。