THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『50/50』

 

50/50 フィフティ・フィフティ(字幕版)

50/50 フィフティ・フィフティ(字幕版)

  • 発売日: 2015/11/15
  • メディア: Prime Video
 

 

 Amazon primeで再視聴。公開当時には、今はなき新京極シネラリーベという映画館で当時に付き合ってた彼女と一緒に見に行った思い出がある。意外と下ネタが多くて、観終わった後はちょっと気まずかった(欧米の映画というのはコメディや日常系になると義務であるかのように下ネタを入れてくるし、ラブコメディですらそういうことをしてくるのだが、「勘弁してほしい」という気持ちがある。世の中には下ネタを苦手とするカップルもいるものだし、誰の人生にとっても下ネタやセックスがそうそう身近にあるわけではないのだ)。

 休日なのにガラガラの人入りだった。新京極シネラリーベはマイナーな洋画やアニメ映画ばかり上映してくれていたのだが、マイナー過ぎて客がほとんど入らず、だから潰れたのだ。『50/50』の他には『ピザボーイ』なんかを見に行った思い出がある。映画館の設備も大したことなければ上映している映画の内容も大したことがないのだが、そういう「気負っていない」感じが好きだった。これは新京極シネラリーベと同じく今はなき祇園会館にも言えることだ。京都みなみ会館はちょっとサブカル臭が強いのが玉にキズだし、京都シネマには新宿武蔵野館的なスノッブさがあってかなり鼻につく。

 

 この映画の内容は、若くしてガンを患い生存率が50%と宣告された主人公(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)が、親友(セス・ローゲン)に励まされたり茶々を入れられたり恋人に支えてもらっていたと思ったら浮気されたりセラピスト(アナ・ケンドリック)といい感じになったり心配する母親をうっとうしく思ったりしながら色々と悩んだりする…という感じである。

 アナ・ケンドリックはかなり可愛らしいが、後半に展開される彼女との恋愛はちょっと映画っぽ過ぎる感じがしてリアリティはない。

 しかし、恋人が病気になった彼氏のことが重たくて彼女が浮気する、という展開は実にリアルだ。親友を表立って励ますのが気恥ずかしくて冗談めかしたりむやみに高いテンションで接して相手にストレスを与えたりうざがられたりするセス・ローゲンのキャラクターなどは、かなり「ありそう」な感じがして良い(同じ監督でセス・ローゲンが主演となっている『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』も見に行くべきだった)。女性の親友同士はお互いの深刻な事情について茶化さずに真っ向から話しあうことができるが、男性の親友同士は相手の事情を真っ当に受け止めることを回避してついつい冗談めかして扱いたくなる傾向がある。これは、深刻な事情を抱えている側からすると安心感を与えると同時に孤独感を与えるものでもあるだろう。この映画ではそういう男性間の友人同士にありがちなコミュニケーションがうまく描写されていた。

 繊細でアンニュイで元気のない顔立ちをしているジョセフ・ゴードン=レヴィットも、この映画の主人公としてはうってつけの役柄だ。

 映画としては特にストリーテリングに際立ったところがあったりするわけではないが、キャラクター描写はいいし俳優陣の顔立ちはいいしヒューマンドラマ的なテーマにコメディ要素が混ざっているしで、いろいろとちょうど良い感じである。誰が見ても楽しめるし、一定の人にとっては感動もさせられる内容に仕上がっていると思う。