THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『ワンダー 君は太陽』

 

ワンダー 君は太陽(字幕版)

ワンダー 君は太陽(字幕版)

  • 発売日: 2018/10/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 生得的な障害により顔に著しい変形障害を負っている子どもの主人公が学校に通い始めて、当初は見た目を理由に同級生からいじめられたりするが、やがて段々と同級生と打ち解けていったり理科の才能を発揮していったりして学校に馴染んでいって最終的には表彰される…というストーリー。

 この映画が劇場で上映されていた当時にはどこの映画館でもこの映画の予告編ばっかり流していたイメージがあり、また予告編や邦題の副題がいかにも「感動もの」という感じで敬遠してしまった思い出がある。Amazon primedで無料配信が開始されたので観てみたが、たしかに、予想通り感動ものではある。しかし、細部への気配りや主人公以外のキャラクターの描写が良くできており、当初予想していたような「感動の押し付け」的な作品ではなかった。

 物語の序盤や終盤では主人公が中心となるが、中盤では主人公の姉や主人公の同級生、また主人公の姉の友人や主人公をいじめる子どもなど、主人公の周縁にいる人物へとスポットライトがどんどん交代していくことになる。姉の描写にはいわゆる「きょうだい児」ならではの苦悩や葛藤が描かれているように思えるし、同級生が他の友人相手に「あいつと仲良くしているのは先生に言われたからやっているだけだ」というセリフを吐くシーンもかなりリアルだ。通常の映画なら悪し様に描かれがちないじめっ子ですら、彼の母親が自分の子をかばうシーンには「この立場ならこういうこと言うよな」というリアルさが感じられてよかった。こういう題材の作品だと主人公の辛さや苦悩にばかりが焦点となりがちであるが、あえて「お前だけでなくて周りの人間も辛いし苦悩しているんだ」と突きつける構図にしているところが優れているのだ。

 また、本来ならいちばん焦点となりそうな母親にあまりスポットが当たらない点もよい。母親の視点に描写を割くと話が重くなり過ぎたりスローペースになるという作劇的な判断もあるのだろう。しかし、ジュリア・ロバーツというおそらくこの映画のなかではいちばん豪華なキャストを使いながら、彼女をあえて脇役的な存在としてしか描かないのはなかなかの英断である。

 とはいえ、結局はどの登場人物も優しくて素直で主人公を直接的に害することはほとんどないし、そういう意味では善人ばかりの世界が過ぎてつくりものっぽさも漂うところは良し悪しではある*1

 この作品は明らかに障がい児とその家族、また学校における障がい児の受け入れなどがテーマとなっている。自分でも色々と思い出すところがあったりした。ただし、主人公は外貌には障害があるが、精神や知能や言語能力やコミュニケーション能力はいたって正常(むしろ、年齢を考えると高度すぎるくらい)なところには留意しておきたい。上記の点に障害があると各エピソードや主人公と他の登場人物とのやり取りを描くことが映画的に難しくなるという問題点はあるのだが、典型的な事例ではないということだ。あとはクライマックスの表彰シーンにもちょっとノレなかった。

*1:「善人ばかり登場する」という作風にも、『スカッとジャパン』とは正反対な方向でイヤさや安直さを感じなくはない。『王様ランキング』的なイヤさや安直さと呼ぼう。