THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『パーフェクト・ワールド』

 

パーフェクト ワールド [DVD]

パーフェクト ワールド [DVD]

  • 発売日: 2010/04/21
  • メディア: DVD
 

 

 

 10年振りくらいに再視聴。脱獄犯のケビン・コスナーが人質がてらに子供を連れ回しているうちに心の交流が芽生える話だ。ケビン・コスナーは犯罪者ではあるが悪人ではないし、彼をおうテキサスの警察署長(クリント・イーストウッド)もケビン・コスナーが悪人ではないことを知っている(冒頭でケビン・コスナーと一緒に脱獄したもうひとりの犯罪者はれきっとした悪人だが、彼は早々に退場する)。しかし追跡側に混じったFBIが典型的な俗物で、けっきょく彼のせいでケビン・コスナーは射殺されてしまうオチである。犯罪学者としてイーストウッドと一緒にケビン・コスナーを追うローラ・ダーンだが、テンプレ的な頭でっかちヒロインではあるがいい味を出している。

 作品としては完全に「父親と息子」がテーマとなっていて、人質として連れ回させられる子供には父親がいないし、ケビン・コスナーも父親が暴力的な人物だったせいで不遇な少年時代を過ごした。そのため彼は子供をないがしろにする大人には容赦がなく、途中で出会った家族にお仕置きを与えたりする。もちろん人質の子供とも擬似親子みたいな関係になり、ケビン・コスナーが父親からもらった手紙を子供に受け渡すのがクライマックスシーンだ。

 

 話としてはよくできているのだが、なにしろテンプレ的な要素も多くて、初回視聴はともかく再視聴ではいまいちのめり込めなかった。

 

 また、人質の子供の家庭はエホバの証人であり、子供はハロウィンもクリスマスも楽しんだ経験もなければお祭りに行ってローラーコースターに乗ったこともなければ綿菓子を買ってもらった経験もない。ケビン・コスナーはそれを聞いてショックを受けて「アメリカ人にはハロウィンとローラーコースターと綿菓子を楽しむ権利がある」と行ったセリフを吐き、子供がこれまで経験できなかった楽しみをできるだけ味わせてやろうとする。ここのシーンはこの映画でいちばん印象深いところであり、やたらと記憶に残る。他の部分がいかにもテンプレ的であるのに比べて、エホバの証人という実際に存在する要素を持ち出しているぶん、妙に生々しいのだ。そして、ここのシーンでは明確に宗教や価値観の多様性を否定している……少なくとも子供に関してはそれらよりももっと重要なものがある、というメッセージを放っている。だから、この映画はしっかり「保守的」な作品でもある。