THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『グリーンバーグ(ベン・スティラー 人生は最悪だ!)』

 

グリーンバーグ (字幕版)

グリーンバーグ (字幕版)

  • 発売日: 2014/01/01
  • メディア: Prime Video
 

 

 U-NEXTで視聴。

 偏屈でヒステリックで超ネガティブで精神病持ちのベン・スティラーと、彼の弟の家で家政婦の仕事をパートタイムでしているグレタ・ガーウィグの、付かず離れずの恋愛関係や肉体関係が主軸のドラマだ。弟夫婦がブラジルに行っている間に家と犬を預かることになった主人公が家政婦と出会って…という導入ではあるが、特に大層なことが起こるわけではなく二人の関係性もあまりロマンティックではなくて、いわゆる「日常系」の話と言えるかもしれない。

 ただし、主人公のキャラクターはなかなかエキセントリックだ。さほど暴力を振るうわけではないが、とにかくすぐにキレて、その場にいる人に対して暴言を吐いてしまう。また、外に出ていて気に食わないことがあればすぐに会社や地方自治体に対して抗議の手紙を書くという習慣を持ってしまっている。ヒロインとは少なく見積もっても15歳以上の年の差があるが、自分が弱っていたり寂しかったりするときにはすぐに電話をかけるのに相手から電話をかけられたら怒られたり「こんな関係はダメだ」と言い出したりと、男女関係においてもかなり未成熟である。最初にヒロインと肉体関係になるシーンにしてもアプローチの仕方が強引でギョッとした。一方でヒロインはかなり器が広くまたお人好しな人格をしており、ダメな主人公に対しても寛容な態度を取り続けて甘やかしてしまう。ここら辺は男性側にとって都合の良い物語になっているし、良く悪くもノア・バームバック監督が影響を受けているウディ・アレンっぽさが出てしまっているだろう。

 とはいえ、主人公にせよヒロインにせよ配役はぴったりだ。特に、生活能力や事務能力はあってしっかりしていそうなのにお人好しで隙が多くダメ男を甘やかしてしまうヒロインは、グレタ・ガーウィグでないとなかなか演じることが難しいように思える。主人公はベン・スティラーも適役だが『パンチドランク・ラブ』や『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』のアダム・サンドラーも思い出させるキレっぷりである。アメリカ映画にはこういうアダルトチャイルドな主人公が一定数存在するのだ。

 犬の出番が多い映画なので犬好きな人なら楽しめるだろう。また、セックスシーンがけっこう唐突に出てくるうえに生々しいので、そういうのが好きな人も楽しめる。

 また、映画の中盤で主人公がヒロインに対してかけた留守電を最後に主人公の目の前でヒロインが聞くという終わり方には、同監督が後に製作することになる『マリッジ・ストーリー』の手紙のくだりを思わせるところがあった。

 

 しかし主人公はかなり神経質な存在であるが、そんな彼の職業が大工であるという設定はギャップがあってしっくりこない。また、明らかに社会性に問題のある彼が(精神病院に入院しているとはいえ)金銭的にも苦労せず生活もまともに送れている点はちょっと不自然かもしれない。まあ単純に親が金持ちであるということかもしれないが、それはそれでムカつくところがある。