THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『遠い空の向こうに』

 

遠い空の向こうに (字幕版)

遠い空の向こうに (字幕版)

  • 発売日: 2014/01/02
  • メディア: Prime Video
 

 

 ホーマー・ヒッカムという実在するNASA技術者の自伝を映画化した作品。アメリカの小さな炭鉱町に生まれた主人公(ジェイク・ギレンホール)が、炭鉱夫のボス的存在で頑固で実利的で息子の夢に理解のない父親(クリス・クーパー)に反対されたり、科学や生徒の夢に理解のある女教師(ローラ・ダーン)に応援されたりしながら、友人たちと一緒にロケット作りに挑戦していく。いろいろな障壁を乗り越えたうちに主人公はついに科学コンテンストに出場してその才能を認められて、最後には奨学金もゲットして晴れて大学に行くことになる…というお話だ。

 

 ただ単に主人公が才能を開花させて行く前向きな話だけでなく、衰退していく「炭鉱」という後ろ向きな舞台とセットであることがポイントだ。いまでは想像できないようなまっすぐで朗らかな笑顔を振りまく若かりし頃のジェイク・ギレンホールも勿論いいが、この映画で最も印象的なキャラクターは主人公の父親である。途中ですこし和らぐところもあるとはいえ、全編にわたってずっと主人公に対して厳しい態度を取っており、最後の最後まで主人公の夢や才能を認めない。単に父親としてのそれだけでなく、炭鉱に象徴されるような「旧時代」が彼に憑依しているかのようでもある(父親は明らかに保守的であり、ストライキに対しても厳しい態度をとる)。また、父親だけでなく、学校の校長や町の警察からも主人公の夢や才能は抑圧される。だからこそ最後の最後で主人公が父親を含めた町のみんなの前でロケットを飛ばすシーンが感動的となっている。

 

 しかし、主人公の「才能」と「努力」ありきなので、いまのわたしのテンションでは見ていてそんなに楽しめない。こういう作品を見ると、才能もなく努力もせずにグダグダしたまま30歳になってしまった自分が責められているような気になってしまうのだ。疲れる。ロケット作りの結果が最終的には「奨学金」という実利に繋がることも、実話なんだから仕方がないし主人公本人からすれば大切なことなんだろうけれど、なんだか夢がなくてイヤである。もっと若い頃や逆に年をとった後にこの作品を見ていたらまた違う感想を抱いていたかもしれないが、いまのわたしには主人公にまったく共感できないのだ。