THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

タワーリング・インフェルノ

 

タワーリング・インフェルノ (字幕版)

タワーリング・インフェルノ (字幕版)

  • 発売日: 2015/03/15
  • メディア: Prime Video
 

 

 ポール・ニューマン(ビルの設計士)とスティーブ・マックィーン(消防部隊長)という二大スター競演によるパニックものの古典。当時としては例になく画期的な高層ビルを建設したかと思ったら配線や資材の予算をケチったためにオープン早々から火事を起こして、記念パーティーにいた客たちが屋上に閉じ込められて、エレベーターやヘリコプターによる脱出を図るもどの脱出方法もやがて失敗して徐々に死人が増えていって…という内容だ。

 初対面の男女の間で恋愛関係が芽生えたりみんなが浮かれているなかで責任者や管理者が利益のために安全に必須な措置を怠っていることが明らかになったり災害の前兆が早々にあらわれたりという前フリの後で、わりと早い段階で火事が起こり、そこからは脱出への試みとパニックとが繰り返される感じだ。映像や画面づくりや小道具の工夫はあまりうまくできているようには思えず、昔の映画特有の画面のショボさがけっこう大きく響いていて、あまり緊張感は感じられない。なにより、2時間半以上という長さがいけない。かなり間延びしている。この内容な90分でまとめられると思う。2大スター共演のために、後から登場するスティーブ・マックィーンの出番を増やすために消防士が活躍するシーンを増やし過ぎてしまった結果のように思えるが…。

 キャラクター描写としてはパニック映画のテンプレの枠は超えないが、不快なやられ役キャラクターは登場するものの彼らについてあまり尺を取らずにあっさり処理するし(また、多少の同情の余地も垣間見させるバランスの取れた描き方だ)善人たちの描き方もよい。むしろ、もう少し人間描写に尺を取ってほしかったくらいだ。ショボいアクションシーンが長々と続くから退屈なのである。

ジョーズ』も同じような展開であるが、あちらはアクションシーンの割合が意外と少なく、ジョーズという危機の大きさを見誤る市長やプロフェッショナルたちの愚かさ(そして、賢くもジョーズの危険性を正確に見積もることができたごく一部のキャラクターの聡明さ)の描写が実にリアリティがあって印象的だった。昔の映画におけるアクションや特撮はいまとなるとどうしても見劣りがするからこそ、それらのシーンの割合が少ない作品の方がむしろ楽しめるものなのかもしれない。