THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『タイラー・レイク 命の奪還』

 

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 インドの麻薬王の息子がバングラデシュ麻薬王に誘拐されたので、傭兵のタイラー・レイク(クリス・ヘムズワース)が雇われて奪還しに行くが、直接の雇い主である麻薬王の手下のサジュ(ランディープ・フーダー)がタイラーを裏切ったりしたせいで窮地に陥りつつも、最終的にはサジュとタイラーとで協力して麻薬王の息子を生還させようとする、みたいなお話。

 純粋なアクション映画であり、タイラーやサジュのナイフとか蹴りとか銃とか自動車アタックとかを駆使し攻防シーン、銃撃戦のシーン、流れるようなカメラワークで魅せられるパルクールなんかが見ものだ。しかしこれはNetflixオリジナル作品であり、普通の人は小さいPCの画面で見ることになるので、アクションを全面に押し出されてもそんなに楽しめないのである。ストーリー展開の合間にキレのあるアクションが繰り出されるくらいならいいのだが、この映画は8割くらいがずっとアクションシーンなので、そのクオリティがいくら高くてもダレてきて飽きてしまう。そしてストーリーは一本道で単調で典型的だし、キャラクターたちは主人公のタイラーを含めてみんな書き割り的で魅力がない。貧民の子供は何人か死ぬが麻薬王の子供は大切にされて生き延びる、バングラデシュ麻薬王には最後に制裁が与えられるがインドの麻薬王はのうのうと生き延びたまま、というのも後味がよくない。せめて麻薬王の息子にもう少しキャラクターとしての厚みを与えて彼に対して感情移入できるような作りになっていたらそれを通じて主人公であるタイラーにも魅力を感じられただろうが、そのような作りにはなっていない。つまり、アクションがすごいだけの凡作なのだ。

 また、『ホース・ソルジャー』を見たときにも思ったが、主演のクリス・ヘムズワースMCUや『ゴーストバスターズ』などでけっこう複雑なキャラクター性を与えられていたときには輝いていたのだが、アクションとプロフェッショナリズムだけでシンプルな格好よさを発揮しなければならないキャラクターを演じるのには向いていないと思う。表情の幅に乏しいし、例えばレオナルド・ディカプリオトム・クルーズキアヌ・リーヴスが持っているようなカリスマ性が全く感じられないのだ(また、マット・デイモンマーク・ウォールバーグが持っているようなタフネスもちょっと感じられない)。