『アイアンマン2』
1作目の『アイアンマン』を見たのは、劇場で公開とされて数年経った後にGYAO!で無料配信されるようになってからだ。そのため、わたしが初めて見た『アイアンマン』作品かつ初めて見たMCU作品は、この『アイアンマン2』ということになる。当時にも『ダークナイト』を劇場で見たりサム・ライミの『スパイダーマン』3部作をDVDで見たりはしていたが、このテのエンタメに振り切ったアメコミ映画を劇場で観ることは初めてであったので、まあ新鮮に感じられて悪くなかった。たしか外国人の集団が同じ劇場にいて大したことのないコメディシーンでもいちいちことあるごとに爆笑していたので、「うるさいな」と思いつつもなんか本場っぽくて楽しかった思い出がある。
しかし、改めて見ると、なかなか出来の悪い作品だ。ヒーロー映画の「オリジンもの」は凡庸になることが常だが、この作品は2作目だというのにやたらと退屈である。世間的にも、『アイアンマン』に関しては1作目が一番の傑作であるという評価が大半であるようだ。
ブラックウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)の初登場作品であり、秘書に扮してトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)に近づく場面ではもういかにも「おじさん好み」なエロ秘書の格好をしていているのが笑えてしまった。後半にある彼女のアクションシーンはCGっぽい違和感が強くて微妙だったが、なにしろ外見的魅力がすごいので彼女が出ている場面は見ているだけで楽しい。
ペッパー・ポッツ(グウィネス・パルトロー)はアメコミもののヒロインにありがちな「出しゃばり」感があって全体的に印象が良くない。苦労人のローディ(ドン・チードル)は役者自身の「苦労人顔」とマッチしていていいキャラをしている。主な敵役はジャスティン・ハマー(サム・ロックエル)とイワン・ヴァンコ(ミッキー・ローク)の二人だが、前者は小物っぽさ全開のうっとうしさや小憎たらしさに溢れている一方で後者は寡黙であったり鳥に対して優しかったりと強面な見た目に反する繊細な要素があって、どちらも名優が演じていることからキャラクターとしては印象的であるのだが、結局は主人公の引き立て役だ。
そして、主人公のトニー・スタークには、この作品の時点では人間的な魅力や感情移入できる要素が全然ないのである。もちろん、性格が悪くて傲慢な人間であると意図的に描写されていることはわかるのだが、ではその性格の悪さや傲慢さを埋め合わせるほどの何かがあるかというと、ない。生来の持病による自分の死期に怯える人間的弱さは描かれていて、そこが感情移入のポイントと設定されているのかもしれないが、彼がヒーローとして活躍するパートとは食い合わせが悪いのだ。
コメディシーンはけっこう笑えた。クライマックスの後にチューしているトニーとペッパーに対してローディがしょうもない下ネタを言うシーンがいちばん面白かったと思う。