THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』

 

 

 前作以上にドタバタコメディも熱血要素も多く「少年漫画」感が増した作品だ。初対面の仲間同士が顔合わせしたり打ち解けていったりする描写は前作で済ませているので、今回は最初からガーディアンズの面々の人間関係やかけあいが楽しめる。お調子者の主人公であるピーター・クィル=スターロード(クリス・プラット)と、相変わらず男性に免疫のないガモーラ(ゾーイ・サルダナ)との恋愛パートが楽しめるほか、気は優しいが無神経で口の悪いドラックス(デイヴ・バウティスタ)と新キャラのカマキリ女のマンティス(ポム・クレメンティエフ)との掛け合いが楽しい。途中でガーディアンズとは離れて行動することになるロケット(ブラッドリー・クーパー)と主人公の養父であり息子への甘さが仇となって部下に裏切られることになるヨンドゥ( マイケル・ルーカー)との掛け合いもしんみりする。破天荒なガーディアンズに振り回されてドン引きしてしまいシリアスキャラが形無しになるネビュラ( カレン・ギラン)もコメディリリーフとして秀逸だし、チビキャラと化してしまった植物生命体のグルートも可愛らしいし、幼いために言葉が伝わらない彼を活用したコメディ描写はテンプレ的でありながらやっぱり笑えるものだ。ほんとうにアメリカ版『ONE PIECE』という感じがする。

 なにより、今回は敵役の描写が良い。この作品のように「破天荒で無法者だが気の良いやつら」を主人公とする場合は敵役はできるだけ傲慢な存在として描いた方が対比が映えるものだが、序盤における敵役である黄金星人たちを率いるアイーシャエリザベス・デビッキ)憎めないところがありながらも高慢ちきな人物であるし、なにより本作のボス敵であるエゴ(カート・ラッセル)は恐ろしさと傲慢さを兼ね備えた名悪役だ。彼の本性が徐々に明らかになっていく描写にはコズミック・ホラーとしての趣がある。そして、それまでは父親に従っていた主人公が、父親こそが自分の母親を殺した瞬間に銃を向けるシーンは素晴らしい。血は繋がっているが家族を目的のために利用する道具としかみなしていないエゴとの血縁関係とヨンドゥとの養父子関係やガーディアンズとの疑似家族関係が対比される点は前作とも共通しているが、ハズレのないテーマを扱っているだけあって相変わらず熱い展開となる。母親や仲間たちのことを思い出して主人公がパワーアップする展開も、漫画ならともかく映画では意外と見かけないものである。

「詰め込み」感も前作以上で、スタッフロールすらカラフルであったり背景の写真が動いたりと最後の最後まで観客を飽きさせない作りになっている。黄金星人たちの造形にはかなり昭和的な感じが漂い、そのために前作よりもむしろ古臭い雰囲気の作品になってはいるのだが、「スター・ウォーズ」のジェネリック作品という風味が感じられなくもなかった前作から脱却してよりオリジナルな作風を獲得したと言えるだろう。また、前作から引き続いて、主人公が母親から受け継いだカセットテープに収められている(という設定の)1980年代までの洋楽の使い方が実にうまい。カセットテープそのものが作中で重要な小道具となっているために、エモーショナルなシーンでエモーショナルな洋楽を流すことを照らいなく堂々とできるのだ。

 途中に挿入されるヨンドゥによる船員虐殺シーンにはマシュー・ヴォーン的な悪趣味さが感じられるし、『スーパー!』や『ブライトバーン』の制作に関わっているジェームズ・ガンが監督であるという点では、いつ悪ノリが過ぎて笑えないレベルの悪趣味なものになるかという危うさを内包しているシリーズでもある。しかし、少なくともこの二作目までは、奇跡的なバランスでコメディと熱血要素を両立させたシリーズとなっているのだ。キャラクターのカメオ出演とか他作品への布石といったオタク的な評価点を除いた、純粋な単独作品としての面白さや完成度は、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズ二作がMCUのなかでもトップだと思う(コメディ要素が最も薄くシリアス面の面白さを追求した作品である『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』も捨てがたいが)。