THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『こころに剣士を』

 

こころに剣士を(字幕版)

こころに剣士を(字幕版)

  • 発売日: 2017/11/15
  • メディア: Prime Video
 

 

 フィンランド/ドイツ/エストニアの共同制作。エストニア出身の熟練のフェンシング選手であるエンデル・ネリス(メルア・ヴァンディ )は、戦時中にドイツ軍に徴兵されたためにソビエト政府から戦争犯罪者認定されてしまった。そのために身分を隠してレニングラードから逃げて、ハープサルという田舎町で学校教師の職業に就いた。だが、フェンシングへの情熱が忘れられない彼は勤め先の学校で子供向けのスポーツクラブを創立して、子どもたちにフェンシングを教え始める。エンデルによる厳しくも熱心な指導は子供たちにも好評で、当局から目を付けられることを恐れる学校側は「フェンシングは封建主義的だ」といってエンデルの指導を止めさせようとするのだが、子どもたちに絆された保護者たちの反対によってフェンシングの指導は継続することとなった。エンデルも孤児である子供たちに愛情や責任感を抱くようになり、自分が逃亡できる機会も捨てて彼らの面倒を最後まで見ることに決めた。そして、ついにエンデルの教え子たちはフェンシングの全国大会に出場するのだが、それと同時にエンデルの正体も当局に発覚することになった…。

 

 あまり映画の舞台となることのないマイナーな国の独特の事情を背景として、主人公であるエンゲルが直面するサスペンスや悲劇が描かれる。それと同時に、子どもたちがはじめて経験する競技に夢中になっていくつかの困難を乗り越えながらも練習を続けて大会という華の舞台での試合がクライマックスとなる…という「競技もの」や「スポ根もの」における定番の展開も描かれる。普通の作品では交わることのない、この二種類の要素を同時に描いたところが、この映画の特徴であると言えるだろう。ヨーロッパ映画らしく演出や展開や画面の構成は抑えめであり、そのためにフェンシングの競技シーンもそこまでハラハラワクワクするというところはない。エンゲルの複雑な事情を描くパートもまあこういう共産主義国家とかナチス国家とかを題材にした作品ではよく見る展開ではあり、既視感は否めない。全体的に「小品」という出来であり、特に破綻や問題点はないが優れたところもあまりないタイプの作品だ。

 ただし、東欧を舞台にしているだけあって、子どもたちは男子も女子も実に顔立ちが整っている。エンゲルだってもちろんイケメンだ。この映画に関する他の人のレビューを見てみると子役の演技に注目したものが多いようであるが、たしかに俳優陣を見ているだけでそれなりの楽しみが得られる作品ではある。