THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『2人のローマ教皇』

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 保守派である265代ローマ教皇ベネディクト16世アンソニー・ホプキンス)と、革新派である266代ローマ教皇のフランシスコ=ホルヘ・マリオ・ベルゴリオジョナサン・プライス)との対話と友情を描いた作品。

 実力派であるお爺ちゃん俳優二人組の共演がウリとなっており、地味な会話劇がメインとなっている作品であるからこそ、些細な表情や台詞のトーンなどを含む二人の演技がキモとなっている。アンソニー・ホプキンスは実物のベネディクト16世と似ているうえにどう見ても「保守」な顔で、ジョナサン・プライスもいかにもな「リベラル」顔をしているので、この二人のキャスティングは最適解と言えるだろう。ホルヘ・マリオ・ベルゴリオの謙虚で好感の持てる人間性も、ベネディクト16世の苦労人としての教皇生活もバランスよく描けていて、ソツがなく上手な作品という感じだ。

 ベネディクト16世は『スポットライト:世紀のスクープ』でも題材となったカトリック教会の性的虐待事件に関する責任を取る立場の人間であり、イマドキの映画界で好意的に取り扱うには勇気が必要とされる人物でもあるのだが、そのあたりに関しても彼の責任について言及するシーンもしっかり入れることでうまく処理できていたと思う。

 ただし、2人のローマ教皇以外のキャラクターが出るシーンが無さ過ぎて(ホルヘ・マリオ・ベルゴリオの回想シーンでは彼の若かりし頃の姿と身の回りの人物もそれなりに登場するが…)、ずっと二人の会話に終始してしまうので、単調な作品であることは否めない。賛美歌?っぽいアカペラだったりビートルズABBAなどの名曲をやわからくアレンジしたりなどのBGMは印象的だし、教皇選挙のシーンやところどころで挿入される風景シーンや教皇たちと一般人との交流シーンなども凝っていたりユーモラスだったりして悪くないので、単調さを補う工夫がされていることはわかるのだが、それでも後半になると退屈さが勝ってくる感じである。

 とはいえ、Netflixオリジナル作品のなかでも特に珍しい「名作」っぽさや「高尚」っぽさが漂う作品であるし、現代でも重要な役割を果たしている人物の生涯や考え方についてドキュメンタリーではなく物語作品という形で学べることは貴重である。もっとドキュメンタリーっぽい作風にもできたところを、「対極の信念を持つ二人の教皇の対話」という実際に起きた事象のドラマチックさを強調することできちんと映画的な面白さを保って仕上げたことは評価すべきだろう(もちろん、そのぶん脚色やフィクションなども混ざっているのだろうが)。