THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『マイ・ライフ』

 

マイ・ライフ [DVD]

マイ・ライフ [DVD]

  • 発売日: 2007/02/23
  • メディア: DVD
 

 

 主人公であるボブ・ジョーンズ(マイケル・キートン)はガンになってしまい余命わずかなところに、妻のゲイル(にコール・キッドマン)が妊娠する。ボブは、残された命を精一杯に使って、生まれてくる子供に残すためのビデオレターを撮影する。最初は妻に隠して撮っていたビデオレターであったが妻にバレてしまい、紆余曲折あった末に妻もビデオレターの撮影に協力しだす。しかし、ボブには「子どもの頃に父親に裏切られた」という気持ちが強く残っており、実の両親との関係は現在に至るまで険悪なものであった。怪しい東洋医者の「治療」を受けたボブは、自分のなかに両親への怒りがまだ残っていることを指摘されて、その解消を試みようとするのだが…。

 

 悪い意味で1990年代の映画らしい作品で、キャラクターの薄さや凡庸で単調な物語、ぱっとしない画面や特に見るべきもののない(むしろダサいところもちらほらある)演出などが気になってしまう。1990年代は普通の人々や凡庸な人々を主題にしたヒューマンドラマ映画が多く作られるようになった時期であり、それ時代はその後の時代にも繋がって諸々の名作映画を生み出す源泉ともなっているのでいいことなのだが、この時期の作品は方法論がないというか手探りなために悪い意味でソツなくこじんまりと収まっていて、かなりつまらないものが多い。

 この『マイ・ライフ』も、ずっと昔の作品である『生きる』に感じられたようなドラマチック性やテーマ性もなければ、『50/50』のようなユーモアであったり気が利いている感じもない。テーマがテーマであるから実際に自分に子供がいる(生まれようとしてきている)身であれば問答無用で感動できて泣けるものかもしれないが、それにしたってもし現代で作っていたならずっと洗練された作品になっていたことだろう。印象に残るシーンすら、あんまり無い始末だ。

 あえて良いところをあげるとすると、甲斐甲斐しい妻を演じるにコール・キッドマンは魅力的だった。マイケル・キートンよりも彼女の方が魅力的に感じるくらいだ。

 また、他の人のレビューを見て気づいたが、主人公の作成するビデオレターの他にも主人公の職業(広告代理店)であったり妊娠している妻が超音波検査されて子供の性別が発覚するシーンなど、当時としては特に"現代的"感が強かったであろう「映像」という要素が強調されている点には注目すべきかもしれない。その一方で、技術ではなんともならない人生の本質的な問題を指摘する存在としてシャーマン的な東洋人が出てきちゃう、というのは現代ではさすがに無理だろう(マジカル・二グロ的な問題点があるからだ)。