THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『男はつらいよ:寅次郎夕焼け小焼け』

 

 

  主人公の車寅次郎=寅さん(渥美清)が上野の焼き鳥屋で知り合った金のない老人(宇野重吉)を柴又に連れて行って世話するが、その老人の傍若無人さに寅さんや家族たちが辟易していたところ、老人の正体は著名な画家の池ノ内青観であった。その後、旅に出ていた寅さんは兵庫県龍野で青観と再開して意気投合する。また、寅さんは芸者のぼたん(太地喜和子)とも仲良くなる。だが、ぼたんは客に貸していた200万円を踏み倒されそうになるという憂き目にあっていた。寅さんはボタンを救うために尽力するが、うまく行かない。しかし、青観との縁が事態を打開するきっかけとなり…。

 

 世間的には「寅さんシリーズのパターンに沿わない、練られた脚本が光る名作」という感じの評価がされているようであるが、わたしとしては青観が中心となる前半パートとぼたんが中心となる後半パートがうまく接続されていないような気がしてさほど感心しなかった。青観のキャラクターは面白いものだしや彼の画についた金額をめぐるコメディシーンは笑えるものだったが、ぼたんは『寅次郎相合い傘』のリリーに比べて性格的にも外見的にも魅力がさほどなく、青観に描写が割かれているワリを食ってキャラクターの薄いマドンナになってしまったと思う。ラストシーンも大体の人の予想が付く内容であるし、テーマの一つである「芸術の価値」についても大した描写や議論が展開されているとは思えない(そういうものを期待するシリーズではないのだろうが)。

 どうでもいいが、冒頭の『ジョーズ』パロディも悪趣味過ぎていただけない。