THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『ジュディーを探して』

 

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 ハリウッドに住むエディ・クランブル(エド・ヘルムズ)はかつては役者を目指していたようだがいまはその夢を諦めて、通販番組などで観客席からヤラセの質問をしたり大げさな拍手をしたりするサクラとして生計を立てている。そんな彼だが、ガソリンスタンドで働くジュディー(アマンダ・サイフリッド)に一目惚れする。お金のかからないデートにジュディを誘うことに成功して、キスもできたりして意気揚々としていたエディだったが、彼のあずかり知らぬところで、下世話なバラエティ番組がエディを取り上げて「いろんな番組の観客席に出ている、この謎の拍手男の正体を突き止めてよう!」という企画が進行していた。その企画は大ウケでハリウッドの街中にエディの顔を晒す広告が貼られてしまい、エディの、そしてジュディーの私生活はめちゃくちゃになってしまう。はじめは番組のことを嫌がっていたがエディだが、いなくなったジュディーを探す目的で、渋々ながら番組出演を承諾する。だが、そのせいでジュディーとの仲はこじれることになり…。

 

「通販番組のサクラ」が主人公という設定は面白いし、テレビ番組の舞台裏を見せられているような序盤とか、同僚のクリス(トレイシー・モーガン)とのやり取りもいい。彼の存在がバラエティ番組に取り上げられて街中から注目されてしまう、という展開も悪くない。しかし、後半の展開はグダグダもいいところである。また、プライバシーとか肖像権を全く気にしない下世話なバラエティ番組の制作者がやっている行為は冗談の域を超えていて笑えないし、そんな彼らに特に罰がくだらない展開も気分が良くないものだ。『マネーモンスター』などを見ているときも思ったが、アメリカでもこういう下世話な番組は俗悪で非道徳的なものだという認識はあるようだが、テレビ業界と映画界は所詮は同じ穴のムジナなので、本気でそういう番組を批判したり撲滅しようとする志は感じられない。結局、映画の設定や舞台にしれっと利用するだけなのであり、なんだか小賢しさが感じられてイヤだ。

 

 映画としてのレベルは間違いなく低い作品だが、ヒロインのジュディを演じるアマンダ・サイフリッドが最高に可愛くて、彼女が出てくるシーンはいずれもテンションが上がった。スカーレット・ヨハンソンからゴージャスさを抜いた代わりに繊細さを足したような感じの女優である。この映画で彼女が演じるジュディはお金に余裕がなく深夜バイトをしている貧乏人という設定なので、服装や髪型も質素で生活感があるものであり、そこが彼女の可愛らしさに一層の拍車をかけていた。主人公を演じる俳優はぱっとしないし(コメディ俳優だから仕方がないかもしれないが)、ジュディのキャラクター自体もかなり書き割り的で浅いものであるが、アマンダ・サイフリッドの魅力が味わえるというだけで、最低限の価値は保たれている。