THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『母が教えてくれたこと』

 

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 ゲイの主人公(ジェシー・プレモンス)は都会でコメディ番組のライターをしているがあまり成功しておらず、長年付き合ってきた恋人とも別れたばかりである。そんな中で、ガンを患った母親の見舞いや介護のために、田舎の実家に戻る。カミングアウトしたとき冷たい反応をした父親と主人公との仲は悪く、闘病のストレスや余命わずかであることからの不安感に駆られる母親(モリー・シャノン)も冷静な状態ではなく、妹たちともさほど仲が良くない主人公の家族関係はギクシャクする。田舎だから同性愛のパートナーを見つけることもそれなりに大変でと、せっかく帰ってきたのにぜんぜん安息することができない。そんななか、ついに母親の生命は風前の灯となり……。

 

 原題は"other people"であり、「他人の人生に起きることだと思っていたことが自分の人生に起きた」という意味合いだ。ニュアンスを翻訳するのが難しい言葉であるとはいえ、この邦題はダメだろう。

 

 コメディ要素もほとんどなく、淡々としていて地味な作品である。ついに母親が死んでしまう終盤にはそれなりにグッとくるところがあるが(主人公と母親との会話や、父親との和解とか)、全体的にはつまらない作品であると思う。

 主演のジェシー・プレモンスは劣化版マット・デイモンな見た目であるし、母親役のモリー・シャノンも役柄的に華を出しようがないし、主人公が同性愛者であるおかげで可愛いヒロインが出てこないところもネックだ(主人公の妹たちはちょっと可愛かったが出番がすくない)。同性愛や闘病のリアルさを描くためとはいえ、同性愛者向けのポルノ動画であったり抗ガン剤の副作用でゲロを吐いたりするシーンが出てくるところも生理的な不愉快さがけっこうキツかった。

 わたしの母親も乳がんにかかった時期があるので抗ガン剤による脱毛などの副作用の描写などはちょっと感じるところがあったが、肝心の主人公のキャラクターにあまり魅力がないし、他にもフックとなるような箇所が特にないのだ。デートアプリでパートナーを探すシーンやドラッグストアでストレスが爆発して癇癪を起こすシーンなどはリアルだと思ったが……。

 

(他の人の感想を調べたところ、この映画をコメディ映画だと判断している人も多いようだ。言われてみれば、「あのシーンって笑かすつもりで描かれていたんだな」と気付かされるところは多い。でもわたしは笑えなくてコメディとして描かれていることに気付くことすらできなかったので、つまりはそういうことだ。)