ひとこと感想:『ゴジラ』
鑑賞したのは今回が初めてだが、あらすじはさすがにあらかた知っていた。映像に関しては「昔の特撮ってこんなものだったんだ」と博物学的にものを見る気持ちでしかみられないし、テレビ塔が破壊されてキャスターが「さよなら、さよなら」と言うシーンも前から存在を知っていたからいまさら観てなにか思うところがあるというわけでもない。
人間ドラマに関しては、山根恵美子(河内桃子)を間に入れての尾形秀人(宝田明)と芹沢大介博士(平田昭彦)との対立と協力はまあありきたりで通り一遍という感じで、むしろ山根恭平博士(志村喬)の方が生物学者としてのゴジラへの愛着や憧憬が感じられるところ(そして役者としての格)により魅力的で印象的なキャラクターとなっている。また、山根博士が国会でゴジラの存在を証言したのに政治家たちにより「パニックを起こされると困るから国民に公表しないでおこう」というシーンは未来予言的で恐ろしいものがあった。
電車における「また疎開か、いやだな」という会話や被災者で満杯の病院の風景、祈りの歌を歌う女子学生たちなど、日本の戦争終結から10年も経たないうちに作られたという時代性が感じられるシーンには興味深さがある。
しかし、全体的には「お勉強」的というか、既知の情報を実際に観て確認するような視聴感になってしまったことは否めない。