THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『グッド・ライ 〜いちばん優しい嘘〜』

 

グッド▶ライ~いちばん優しい嘘~(字幕版)

グッド▶ライ~いちばん優しい嘘~(字幕版)

  • 発売日: 2019/11/27
  • メディア: Prime Video
 

 

 第二次スーダン内戦で難民となり、アメリカの各地に移住したスーダンロストボーイズのエピソードに基づいた映画。

 主要人物であるマメール、ジェレマイア、ポール、アビタルを演じるアーノルド・オーチェン、ゲール・ドゥエイニー、エマニュエル・ジャル、クース・ウィールはいずれも本人たちがスーダン難民であったり元少年兵であったりすることがポイントだ。

 リース・ウィザースプーンが主演とされているが、彼女が演じるキャラクターであるキャリーは物語においてそれほど出番があるわけでもなく、普通に考えて脇役であるだろう(スーダン人たちよりもキャリーが全面に押し出されているジャケットには、ある種のホワイトウォッシュっぽさが感じられる)。また、どうでもいいことだが、『アントマン』におけるヴィランの演技が板に付いていたコリー・ストールが善人の役を演じているところがなんだか違和感が強過ぎて面白かった。

 

 スーダン難民の問題を世間に伝えるというメッセージ性ありきの作品という感じが強くて、ストーリーは他愛ないものであり特に画期的な要素はない。タイトルとなっている「グッド・ライ 」がようやく登場するのは作品の終盤になってからだし、それも取って付けたようなものであって作品のプロットと調和しているようには思えない。「アメリカに到着したらアビタルだけ他の三人から引き離されてしまった」という問題もなんとなく解決してしまうなど、全体的に構成は脚本はかなりゆるいものとなっている。序盤においてスーダンからケニアの難民キャンプに至るまでの苦難の道のりを描くパートも、シリアスな内容ではあるが面白いものとは言えない。

 とはいえ、マクドナルドもジョークも作り笑いも知らないスーダン難民たちがアメリカとのカルチャーギャップに戸惑う様子をおかしく描くコメディ部分は、テンプレ的でちょっとステレオタイプ的な部分がありながらも、安定の面白さがある。現代社会で資本主義社会なアメリカの偽善や腐敗に、純粋な心を持つスーダン人たちが「これはおかしい」と困惑して憤慨する場面も、オリエンタリズム的ではあるが定番の良さがあるという感じだ。特に、「良心」を体現するかのようなジェレマイアのキャラクターがよかった。役者たちもみんな印象的で個性も立っており、他の作品での活躍もみたいところだ。