THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』

 

ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命(字幕版)

ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命(字幕版)

  • 発売日: 2017/09/20
  • メディア: Prime Video
 

 

 ケネディ大統領の妻ジャクリーン・ケネディナタリー・ポートマン)を主人公にして、夫が暗殺された直後の彼女の童謡とか対応とか葬儀をどうするかということをめぐってのケネディ家とのいざこざとか、寡婦となってしまったファースト・レディとしての使命を決意するまでとかが描かれる。

 わたしはナタリー・ポートマンのファンであるし、同じくファンであるグレタ・ガーウィグがジャクリーンの秘書兼親友役を演じていると知ってこの作品を観てみたが……公開当時からの評判通り、お世辞にもクオリティが高い作品とは言い難い。丁寧さや真面目さは感じられるのだが、「夫を暗殺されてしまったファースト・レディ」という(不謹慎ながら)いくらでも面白い作品が作れそうな人物を主人公にしているのにぜんぜんフックがなくて観終わった後にも印象に残るものがない作品になってしまっているのだ。妙にホラーちっくなBGMにも、なんだかぎこちなさを感じてしまう。暗殺事件直後と時間が経ってからのインタビューを行き来する構成や視点がコロコロと変わるカメラワークなどにはそれなりの工夫が感じられるが、全体的にまとまりがなくて、ねらいがわからない。もう少しピントを定めて制作されていたらだいぶマシな映画になっていたと思う。

 ホワイトハウスの内部についてコメントするシーンとか、JFKリンカーン大統領を重ねるシーンとか、美術品を置いてホワイトハウスにも歴史的な積み重ねを与えたいと願うシーンなど、アメリカ史とJFKを接続させようとジャッキーが望んで努力するシーンにはそれなりの面白さがあった。しかし、ここもそこまで掘り下げられているわけではない。

 

 しかし、ナタリー・ポートマンの演技は素晴らしい。彼女の繊細さや美貌をたっぷりと活かしながらも、独特で印象的な喋り方にはジャクリーン・ケネディを完コピしている風格もある(実際にジャクリーン・ケネディがどんな喋り方をしていたかなんて知らないけれど)。タバコを吸うシーンが多いのだが、ナタリー・ポートマンとタバコとの「似合わなさ」がまた良い意味で画面映えするのだ。

 共演しているグレタ・ガーウィグも、その大柄な身体とおっとりした喋り方に由来する「控え目ではあるが安心感と頼り甲斐のある女友達」っぽさが全面に出ていて、ハマリ役という感じである。