THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『バットマンvsスーパーマン:ジャスティスの誕生』:「はあ?」だらけだったけどいま見ると意外と悪くない

 

バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生(字幕版)
 

 

 ダークナイト三部作を再視聴してティム・バートン『バットマン』も再視聴したついでに、こちらも再視聴した。ベン・アフレックの顔が無性に見たくなったという事情もある。

 2016年の公開当時に劇場に観にいった時には、かなり期待して観にいったのだが、公開当時にはけっこうガッカリした思い出がある。バットマンベン・アフレック)とスーパーマンヘンリー・カヴィル)が激突する理由がレックス・ルーサージェシー・アイゼンバーグ)の策略であるという展開はしょうもなかったし、二人が和解するきっかけが「バットマンの母親もスーパーマンの母親も"マーサ"であり、母親を人質に取られていたスーパーマンバットマンに殺されそうになる直前に"マーサ"とつぶやいた」ことであるのも、劇場で観た当時には「はあ?」となった。ヒロインのロイス・レイン(エイミー・アダムズ)の取ってつけたような活躍もビミョーだったし、いかにもひ弱そうなジェシー・アイゼンバーグが演じるレックス・ルーサーは劣化版ジョーカーといった趣である。それに、何と言っても、ボス敵のドゥームズデイのデザインが酷すぎる。「はあ?」となる。あんな醜い化け物のせいでスーパーマンが死んでしまうのも「はあ?」だ(また、前作が『マン・オブ・スティール』の一作のみであるから観客としてはスーパーマンに対する思い入れがあまりなくて、彼が死んでもあんまり悲しくない、という問題も大きかった)。

 いちばんの見所はバットマンの窮地にワンダーウーマンガル・ガドット)が登場シーンであり、彼女のテーマBGMの出来の良さもあってこのシーンはかなりアガるのだが、『バットマンvsスーパーマン』というタイトルで美味しいところをワンダーウーマンが持っていっちゃうのはどうよ、という感じはする。しかしこの映画のワンダーウーマンは滅法に格好良くて魅力的で(実力的にはスーパーマンよりかは下のはずだがその活躍はスーパーマンよりも印象的だ)、一気に虜になってしまった。翌年に公開された単独主演作品『ワンダーウーマン』も面白かったことだし、彼女に関しては大満足である。

 

 ともかく、上述したように公開当時には「はあ?」だらけだった『バットマンvsスーパーマンジャスティスの誕生』であるが、「そういう作品なのだ」ということを理解したうえで冷静になって再視聴すると、意外と楽しめた。

 いかにも頼りなくて情けなくて天才ではなく秀才ポジションであり三枚目感が漂い性格のしつこさとか陰気さも感じられるベン・アフレックは、スーパーマンワンダーウーマンに対比される存在としてのバットマンとしてはピッタリだ。ヘンリー・カヴィルガル・ガドットも男女それぞれの美を追求した彫刻感や完璧超人感のある俳優であるからこそ、「人間味」がものすごいベン・アフレックが映えるのだ(これがクリスチャン・ベールだったら、ヘンリー・カヴィルとの対比が活かされないところだった)。スーパーマンの母親の方のマーサを救出するためにバットマンが等身大なアクションをするところも優れていた。

 ストーリーの出来はやはり完璧とか素晴らしいとかというまでには至らないが(レックス・ルーサードゥームズデイのショボさやキャラの弱さが重荷になり過ぎている)、ひど過ぎるということもない。深刻なテーマを回避してエンタメや内輪ネタに振りきってしまったマーベル映画に比べると、深刻で重苦しいヒーロー映画を描こうとするザック・スナイダー監督の試みは評価できるものであるし、マーベル映画の真似っこをするよりも独自路線を貫いてくれる方が全然良い。

 ただし、「ヒーロー同士の対立」という題材については、『バットマンvsスーパーマン』の後に公開された『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の方がずっと上手く描けていたことは否めない。また、『バットマンvsスーパーマン』にせよ『シビル・ウォー』にせよ、ヒーロー同士のイデオロギー対立を正面から描くことはできずにけっきょく悪役の策略による仲違いに落ち着いてしまうあたりには、物足りなさが付きまとう。まあ、イデオロギー対立を正面から取り上げるとこんどは和解を描くことが不可能になってしまいそのあとのシリーズ展開に支障をきたす、という問題はあるのだろうけれど。

 

 ともかく、改めて観てみると「ザック・スナイダーも悪くないじゃん」とポジティブな感想が抱けた。ザック版の『ジャスティス・リーグ』の配信も待ち遠しい。ベン・アフレックが演じるバットマンはザック版『ジャスティ・リーグ』の後にはもう観れなくなることはとても残念だけれど……。