THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『#生きている』

 

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 Netflixオリジナルで韓国映画でゾンビもの。

 ゲームオタクな青年のジュヌ(ユ・アイン)がマンションの部屋でゲームしているうちにゾンビパンデミックが発生して、マンションの外にはゾンビ大量発生で出ることができないので、家にあったレトルト食品で食いつなぎながら籠城していたら向かいのマンションで同じく籠城していた同世代の女子であるユビン(パク・シネ)と窓越しであったりトランシーバーを使ったりでコミュニケーションするようになって、そのうちにロープかなんかを使って合流してマンションからの脱出を試みるがゾンビが大量発生してもう大変で、あとゾンビではなく人間だけど悪人なおっさんのせいで危機に陥って……みたいなストーリー。

 コロナ禍のソーシャルディスタンスなご時世を反映させたり「離れても人と人との心はつながってますよ〜」的なテーマを描いたり、スマホやドローンやネットを駆使するデジタルネイティブな主人公のキャラクター性(それと対比させるようにアウトドア派なヒロイン)、マンションでの籠城というワンシチュエーション感(後半から言うほどワンシチュエーションでもなくなるのだが)などなど、ゾンビものに現代風のいろんな要素やキャッチーな工夫を入れたさっぱりした作品だ。

 韓国映画のゾンビものといえば『新感染』を連想するところだが、「善人は格好良く死ぬ、悪人は惨めに死ぬ」というモラリズムが徹底されていたり社会批判の要素も交えながら真面目でどっしりした作りであったあちらの作品に比べて、『#生きている』では現代的なテーマや社会風潮を描きつつもその扱いはかなり軽い。ちょっと気が利いているだけで実際には特筆すべき要素や画期的な点は何もない、佳作的なエンタメ作品だ。主人公の青年がいかにもアホそうな感じのキャラクターとして描かれている点はちょっと珍しいかもしれない。

 オタク青年によるマンションでの籠城という当初のシチュエーションは面白いのだが、そこの描写や設定を奥深く描くということもなく、比較的あっさりとユビンとの交流に話が移ってしまう。また、一旦マンションを脱出した後に色々あって悪人のおっさんに薬を盛られるまでの一連のくだりは異様につまらなく、ゾンビ映画にありがちな展開をやってみましたという感じしかしない。

 まあ無料で見るぶんには悪くないが、それだけ。エンタメとしても及第点ではあるがさほど優れているわけでもなく、毒にも薬にもならず記憶にも残らないという感じである。