THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『ロング・ショット』&『ミッドナイト・スカイ』&『チェリー』&『真実の行方』

●『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』

 

 

 

 同じジョナサン・レヴィン監督の『50/50』は面白かったし*1、シャリーズ・セロンという豪華な女優を起用していたり「年上エリート女性との恋」という点にも期待していたんだけれど、観てみると結果として期待はずれだった。

 コメディ映画にこんなことを言うのもなんだけど、女性の大統領候補と冴えないジャーナリストの恋にリアリティがなさ過ぎて、全体として荒唐無稽。せいぜいが環境大臣くらいにしていたほうがよかったと思う。また、明らかに社会的立場の低い主人公に対してヒロインがけっこうあっという間になびいてしまうし、恋のライバルとなる社会的地位の高い男性も存在しないので、ラブロマンスとしてもリアリティとドラマ性に欠け過ぎている。ヒロインを上昇婚志向にとらわれない公明正大な人間として描くのはいいが、そのせいで、逆説的に「男にとって都合のいい」ストーリーになっているのだ。

 政治やジェンダーが表立ってくる設定のために「リベラル」感が強いのも良し悪し。環境問題を堂々と取り上げているところは好ましい一方で、トーク番組の下劣な司会者が最後にやっつけられるシーンなどのフェミ要素には取って付けたような感じがする。主人公の親友が共和党支持者であることが判明するシーンも、エクスキューズという感じが強かったかな…。

 

●『ミッドナイト・スカイ』

 

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 世界でいちばんセクシーな男が監督と主演を兼ねた映画だから義務的に鑑賞。

 途中でつまらなくなって流し観に移行したので、後半のストーリーは把握していない。幼女と交流するおじいちゃん姿のジョージ・クルーニードワーフみたいで可愛かった。しかし、『密航者』のアナ・ケンドリックといい『アド・アストラ』のブラッド・ピットといい、役者が作品のプロデュースや監督に関わると「宇宙もの」をやりたがるのはなんでなんだろう。

 

●『チェリー』

 

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 AppleTVで鑑賞。

アベンジャーズ』シリーズのルッソ兄弟に『スパイダーマン』のトム・ホランドというMCUファン垂涎の組み合わせであるが、世間の評判は悪く、わたしとしてもかなりイマイチな作品。「ドラッグ中毒の帰還兵」という現代のアメリカの社会問題を象徴する主人公が描かれるが、現代のアメリカの社会問題を象徴しているがために、これまでのアメリカ映画で散々観させられたシーンの目白押し。第四の壁を突破するメタフィクション的描写もうまくいっていない。そして2時間半もあるわりにどうにも「気合が入っていない」というか、義務的に作られている感じが強いのだ。ルッソ兄弟も「なんか社会問題についての映画を作っておけば監督としての実績を解除してポイント稼げるから」という感覚で作ったんじゃないのかな。

 ヒロインは絶対に主人公が戦争に行っているあいだに別の男を作ったり遠くに去っているだろう、と思っていたら健気に待っていて、主人公と一緒に落ちぶれていくところはロマンティックでよかった。

 

●『真実の行方』

 

 

 

 学生時代に見て面白かった、ポール・ニューマンの『評決』と勘違いして鑑賞。どっちも裁判ものであるから。でも、こちらも観たことがあったかもしれない。そしてつまらなかった。銭ゲバ弁護士であったリチャード・ギアが改心していく描写にはドラマ性があるし、エドワード・ノートンの二重人格の演技はそれなりに迫真なのだけれど、最後のオチでせっかくの感動的なドラマが台無しになる。

 わたしの経験上、「法廷もの」で最後にどんでん返しするタイプの作品って、だいたいが「いままでのドラマはなんだったんだよ」となって面白くない(例外は『情婦』くらい)。法廷ものにはミステリー要素ではなく、「正義」をめぐる闘争や論争を期待したいところだ。