THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『アウトサイダー』

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『KATE/ケイト』のついでに、「欧米人の監督が作って欧米人を主役とした、日本を舞台にしたヤクザもののNetflixオリジナル作品」である『アウトサイダー』を鑑賞*1。しかし、『KATE/ケイト』における日本がスチームパンクでハデハデのトンチキであるのに対して、『アウトサイダー』における日本は戦後の旧い時代ということもあって色味が薄く暗く生々しくてリアリティがある。

 ストーリーとしても、実にまじめに「ヤクザもの」をやっているという感じ。仁義もしっかりと描かれており、『仁義なき戦い』などよりもずっと湿っぽくてロマンチックでかつ淡々としている。抗争の描写も地味。なので、まあ、作品としてのオリジナリティはなく、面白くもない。

 主演であるジャレッド・レトの年齢不詳の怪しさや、妙に日本のヤクザの世界に溶け込めている奇妙さ(ジャレッド・レトって人種すらちょっと「不祥」感がある)、ジャレッド・レト浅野忠信との盟友感、お相撲さんやストリッパーなどのオリエンタル感を楽しめればいいというところだろうか。飲み屋でジャレッド・レトが面白くないジョークを英語で披露して、浅野忠信が日本語に訳した後に周りの人たちに笑いを強要するシーンがいちばん面白かった(その前にデブのヤクザが披露した「イモ虫、そしてイモ虫!」の芸はいつかわたしもやってやろう)。

 とはいえ、白人男性の主人公が日本人たちから散々に罵倒されて排除される姿は、映画ではほとんど見かけることがないものなので新鮮だ。「血」でつながるヤクザだからガイジンが疎外されるのも仕方ないと思うけれど、ヤクザじゃなくてふつうの白人男性が日本社会から疎外される姿を描いた作品なら(白人女性ならもうありそう)、意義や面白さもありそうなものだ。そういう作品もいつか誰かに撮ってほしい。