THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『スウィング・キッズ』+『EXIT』+『エクストリーム・ジョブ』

●『スウィング・キッズ」

 

 

 

 朝鮮戦争時の捕虜収容所を舞台としており、タップダンスを通じて北朝鮮兵士のロ・ギス(D.O.)と米軍の黒人兵士のジャクソン(ジャレッド・グライムス)が友情を培っていき、ほかにも中国人兵士や女性通訳士などもタップダンスチームに参加して仲良くなってあれこれと関係を深めていくが、最終的には収容所内で暴動とその鎮圧が起こってジャクソン以外はみーんな死んじゃいます、というお話。

 前半は実にテンポがよく、自由主義嫌いのギスがタップンダンスの魅力には逆らえずついつい絆されていく流れの描写も丁寧だし、個性の強い脇役たちも魅力的だ。白人兵士たちの「ダンスバトル」のシーンでは、戦時を舞台にしたファンタジー人情ものとしてのこの作品の魅力が最高潮に達する。しかし、ダンスバトルで負けた白人兵士たちがけっきょく暴力に訴える流れを皮切りにして、乗り越えられないイデオロギー対立や分断や憎しみなどの「リアル」が顔を出していく。……だけれど、韓国映画らしく、この「リアル」なバイオレンスの描写が過剰なくせに雑で、リアリティをまったく感じられない。クライマックスの「悲劇」も、無理矢理につくられたものとしか思えないのだ。それに対する救済の描写もなくて「なんやねん」となる。こんなんだったらお花畑なファンタジーに徹していた方がはるかに魅力的な作品になっていただろう。

 もちろん、最初から最後までファンタジーとリアリティの配分が絶妙だった『ジョジョ・ラビット』には及ぶべくもない。比較するのもおこがましい。

 リアリティを描こうとしているくせに「死亡フラグ」をネタにしたコメディタッチで死亡シーンが描かれるのは頭がおかしいとしか言いようがないし、冒頭でギスが踊るコサックダンスがCGで描かれているのも作品のメインモチーフである「ダンス」の価値をしょっぱなから貶めていて「ナメとんのか?」という感じだ。『パラサイト:半地下の家族』もそうだけど、韓国映画って、傑作に必要とされるはずの洗練や徳や品性をかなぐり捨てがたる悪癖が強すぎると思う。

 

●『EXIT』

 

EXIT(字幕版)

EXIT(字幕版)

  • チョ・ジョンソク
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 毒ガスであふれる高層ビルから、ニートの青年(ヨンナム)とホテルウーマンのウィジュ(イム・ユナ)が脱出をはかる、サバイバルもの。

 序盤はパニック映画としての要素もあるが、主役カップル以外は早々に救出されるし、一般市民はともかく主人公の関係者は死んだりしない。明るくて前向きでコメディ・タッチな雰囲気が常にただよう、ゆるい感じの作品だ。

 コメディ描写はありきたりで指して面白くないし、クライマックスの展開もありがちで予想が付くものだが、まあ見ていネガティブな感情は抱かない。『#生きている』といい、ニートの青年が主人公になるというのはアメリカ映画ではなかなか見られなくて、韓国映画と日本映画の妙な共通点だと思う。マンガ的な感じがするね。

 

●『エクストリーム・ジョブ』

 

 

 

 麻薬捜査班の落ちこぼれ五人組が犯罪現場を特定するためにフライドチキン店をはじめたらそれが繁盛してしまい……というコメディなポリス映画。

 ギャグはコテコテであるし、アメリカ映画っぽさもやや強すぎるが(ハリウッドリメイクが決定しているらしいが納得だ)、なかなか面白い。導入の設定のおもしろさだけなく、主役であるおっさんのコ・サンギ (リュ・スンリョン)をはじめとして捜査官五人組のキャラも敵役のキャラもしっかり立っている。テーマソングもテンションが上がるし、クライマックスの格闘シーンにて落ちこぼれ五人組が格闘面ではエリートであることが判明する流れも実に爽快で楽しい(おっさんのしょぼくれっぷりの演技が見事で、すっかり騙されてしまった)。

 日本語吹き替えがあったので、それで観たんだけれど、ところどころ違和感を抱きつつも、抵抗感なく観れた。ほかの二作よりも好印象が抱けたのも吹き替えによりストレスや負担なく観れたということがあるだろう。