THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『サイン』&『フライトプラン』

●『サイン』

 

 

 

 

 公開年は2002年でわたしは中学一年生だったけれど、やたらと評判が悪かったような記憶がある。……と思って調べたら、「2002年で最も高い収益を上げた映画の一つ」であるそうだ。まあ『シックス・センス』は大ヒットしたはずなので、同じシャマラン監督作品である『サイン』も期待して観に行った結果、予想と反した内容で「なんじゃこりゃ」となって悪評につながった、ということかもしれない。

 

 とはいえ、わたしは今回はじめて観たのだけれど、ふつうに面白い。メル・ギブソン演じる主人公の娘(アビゲイル・ブレスリン)と、主人公の弟役を演じるホアキン・フェニックスが出てくるシーンの大半は「シリアスな笑い」というか、シュールな面白さがあり、終始真面目腐った顔で家族を守ろうと腐心するメル・ギブソンといい対比になっている。この「シリアスな笑い」の描き方はどちらかといえば90年代やゼロ年代というよりも現代の映画の水準に近いのではないだろうか。

 公開当時にテレビで流れていた予告などからはもっと曖昧で重厚な「心理劇」な作品だと勝手に思い込んでいたのだが、ドストレートに古典的なミステリーサークルがドカンと出るオープニングから、冗談みたいに王道なグレイ型の宇宙人と対峙することになるクライマックスまで、並の映画にはないような明け透けな展開が繰り広げられて驚いた。とはいえ、『宇宙戦争』的なストーリーをマクロではなくミクロな視点から描くというのはあくまで表面上のものであり、ある意味ヨブ記的な「神への疑い」とか「信仰心を忘れないこと」がメインのテーマであるのだろう。それにしたってストレート過ぎる気はするが、「シリアスな笑い」パートの面白さと逃げも隠れもない本筋の直球っぷりには好感が抱けて、見ていて楽しかった。

 

●『フライトプラン

 

 

 

 

 こちらも『サイン』と同じく、公開当時に話題になったが評判も悪かった、という記憶がある作品。また、『サイン』と同じく、当時の予告から「実は主人公の娘は存在しなくて主人公は精神病という、よくある心理サスペンスかな」と15年以上ずっと思っていたのだけれど、いざ観てみたら「心理サスペンス」と観客に推測させること自体が二重のミスリーディングとなっている、王道でまっとうなサスペンス作品であった。

 ジョディ・フォスター演じる主人公からは「母親」としての力強さや根性を感じられるので、クライマックスの展開も安心してみられる。一方でピーター・サースガードが真犯人であるというのはちょっと捻りがなさ過ぎて、彼がやられて黒幕が判明する……という展開のほうがワクワクしたしミステリーとしても面白くなったと思う。共犯役のエリカ・クリステンセンは唇がセクシーで魅力的、機長役のショーン・ビーンが最後に謝罪するエンディングで予想できたものではあるけれど王道で感動的だ。

 ……もっとも、観客の誰もが思うだろうけれど、「濡れ衣を着せようとしたアラブ人には謝ってやれよ」とは思った。原題の作品なら彼の扱いはもっとずっといいものになっただろうし、テロ事件から数年後である当時のアメリカの雰囲気がちょっと伝わってしまった。