『500ページの夢の束』
グループホームで暮らす自閉症の成人女性であるウェンディ(ダコタ・ファニング)は、大好きな『スタートレック』の脚本コンテンストに応募するための500ページの脚本を書き上げるが、締め切りギリギリまで脚本の仕上げをしていたために郵送ではコンテストに間に合わないことに気が付いた。そして、グループホームのあるサンフランシスコかロサンゼルスまで移動して、『スタートレック』の製作会社でありコンテンストの開催主体であるパラマウント社に脚本を直接手渡すことをウェンディは決意する。
チワワ犬のピートを道連れに旅をするウェンディであったが、自閉症であるために世間知らずなので、バスのチケットも買えなかったりせっかく乗れたバスから叩き出されたり、金を巻き上げられたりする。それでも親切な老婦人の助けでロサンゼルスまでたどり着けそうになったが、今度は交通事故に巻き込まれてしまい……。
自閉症だから仕方がないとはいえ、日常生活における基本的な所作や他人とのコミュニケーションもままならず物事がうまくいかなければ癇癪を起こしてしまう主人公の姿には、観ていて普通にイライラさせられる。主人公がブロンド美女のダコタ・ファニングであるからかろうじて観ていられる物語となっているが、これが男であったりさほど可愛くない女性の物語であったら誰も興味を持たないだろう。
脚本をパラマウント社に届けるまでの間に事故にあったり脚本を紛失しそうになったりの大騒ぎが繰り広げられるが、それほどまでに苦労して届けた脚本はけっきょくコンテストに落選するので、なんのこっちゃという話である。途中で遭遇するトラブルや触れ合う人物たちにはいかにもテンプレ的でフィクション的な虚構感が漂っているし、話の内容自体は「はじめてのおつかい」以外の何物でもない。そして、いい歳した成人女性の「はじめてのおつかい」を暖かく見守ってあげられるほどの優しさは、わたしにはないのだ。
ついでに言うと、ダコタ・ファニング以外の役者もパッとしない。グループホームのヘルパーであるスコッティを演じるトニ・コレットだけは演技のうまさが感じられてよかった。