THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『七人の侍』

七人の侍 [Blu-ray] 出版社/メーカー: 東宝 発売日: 2009/10/23 メディア: Blu-ray TOHO新宿にて、「午前十時の映画祭」で鑑賞。なんたって無職だから平日から午前十時の映画祭に行けちゃったりもするのだ。ところで、「午前十時の映画祭」は10周年である今…

『タクシー運転手:約束は海を越えて』&『1987、ある闘いの真実』

『タクシー運転手:約束は海を越えて』は以前に配信サイトで視聴していたが、私の家のご近所にある駐日韓国文化院で無料の上映会をやっていたのでお邪魔して再視聴した。途中で音が飛んだり映像が乱れたりはしたが、まあ無料なので文句はない。 『1987、ある…

『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』&『X-MEN: フューチャー&パスト 』

X-Men: フューチャー&パスト (字幕版) 発売日: 2014/10/01 メディア: Prime Video X-MEN:ファースト・ジェネレーション (吹替版) 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video 映画の『X-MEN』シリーズには『ダークナイト』のような重厚さもなければMCU(の…

『大脱走』

大脱走(2枚組) [DVD] 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 発売日: 2017/08/02 メディア: DVD TOHO新宿にて、「午前十時の映画祭」で鑑賞。平日の朝に早起きして、四ツ谷から歌舞伎町の劇場までゆったりと歩いていって…

村上春樹の「ファミリー・アフェア」

パン屋再襲撃 (文春文庫) 作者:村上春樹 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2016/10/07 メディア: Kindle版 短編小説の感想というものは書くのが難しいものだし、特別なオチやトリックが用意されている作品でもなければテーマなどが明確に設定されていない…

『ザ・スクエア 思いやりの聖域』:豊かな知識人による豊かな知識人のための「格差社会」映画

ザ・スクエア 思いやりの聖域(字幕版) 発売日: 2018/09/21 メディア: Prime Video Netflixで視聴した。ヨーロッパ映画を見るのは久しぶりだ。Wikipediaを見たところスウェーデンやデンマークなどの北欧で製作された映画のようだが、作中ではスウェーデン語…

村上春樹の『沈黙』:なぜ人は物語を相対主義的に読解したがるのか?

沈黙 (集団読書テキスト (第2期B112)) 作者:村上 春樹 出版社/メーカー: 全国学校図書館協議会 発売日: 1993/03/01 メディア: 単行本 この作品は学校教育の現場で集団読者や読書感想文の題材として選ばれることも多く、その内容を知っている人は多いだろう。…

『1917 命をかけた伝令』:戦場の地獄めぐりゲーム

1917 アーティスト:Original Soundtrack 出版社/メーカー: Sony Classical 発売日: 2019/12/20 メディア: CD 無職なので平日でもお構いなしに映画を観に行ける。昨日の午後、新宿はTOHOのIMAXにて『1917 命をかけた伝令』を観にいった(毎月14日はTOHOが安く…

『リチャード・ジュエル』:愚直でクソ真面目な人物が主人公の珍しい物語

アトランタオリンピックの会場近くの公園で警備員をしていたリチャード・ジュエルが爆弾を発見して、おかげで客の避難を開始して被害を最小限に抑えることができてリチャードはメディアに取り上げられて一躍地元のヒーローとなったが、地元の新聞が「爆弾事…

映画作品の「良さ」と、視聴者の「共感」について

ユー・キャン・カウント・オン・ミー (字幕版) 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video いまは失業中で時間があるので、これを機会にHuluやdTVなどの普段利用しないサブスクリプションサービスの無料期間を利用しつつ、映画をたくさん見ている。しかし、…

外在批評の映画ファン/内在批評の漫画ファン

グリーンブック(字幕版) 発売日: 2019/10/02 メディア: Prime Video 今年のアカデミー賞作品賞は『パラサイト 半地下の家族』が受賞したが、元々の『パラサイト』の世評が高かったのとアカデミー賞で初のアジア映画(外国語映画)の受賞ということで世間では…

『ファミリー・ツリー』&『コネチカットにさよならを』:ダメなおっさんが主人公の文学的作品

ファミリー・ツリー (吹替版) 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video www.netflix.com 並べて論じるような作品ではないかもしれないが、どちらも妻子を持つ(持っていた)おじさんが主役の、小説を原作として「文学的」な雰囲気の漂う映画だ。 『ファミ…

アカデミー作品賞ノミネート作品全作の感想を書いていくぞ!

eiga.com めずらしいことに、今年のアカデミー作品賞ノミネート作品9作のうち日本で公開している7作は全て劇場やNetflixで視聴済みだ。せっかくなので各作品の感想や「アカデミー賞を取ってほしさ」などをサクッと書いてみよう。 『フォードvsフェラーリ』…

「優しくない笑い」の面白さ(名作シットコム紹介(2):『となりのサインフェルド』)

ソフトシェル となりのサインフェルド VOLUME 3 [DVD] 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 発売日: 2014/11/26 メディア: DVD 日本で有名なアメリカのシットコムといえば、みつ昔前なら『フルハウス』、ふた昔前なら『フレンズ』、ひ…

「虐げられた女性同士が連帯して男性社会に復讐する映画」を私が苦手とする理由

お嬢さん(字幕版) 発売日: 2017/08/21 メディア: Prime Video タイトル通り、「虐げられた女性同士が連帯して男性社会に復讐する映画」というものが世の中にはいくつか存在しており、私はそれが苦手だ。その理由は、端的に言ってしまうと、私が男性であり復…

料理や映画について批評を"するべき"理由

Frasier The Entire Collection Seasons 1 - 11 [Import anglais] メディア: DVD 高校生の頃に実家で家族と『そりゃないぜ!?フレイジャー』を観ていたとき、とある何気ないシーンの印象が妙に強く、いまでも記憶に残っている。……とはいえ、私が『そりゃない…

名作シットコム紹介(1):『そりゃないぜ!?フレイジャー』

Frasier The Entire Collection Seasons 1 - 11 [Import anglais] メディア: DVD 高校生の頃、『Frasier』というシットコムを毎晩のように家族と観ていた時期があった。アメリカでは11シーズンまで放映されていたらしいのだが、日本ではさほど人気が出なか…

『フォードvsフェラーリ』:豪華な俳優陣による古き良きな大作映画

フォードvsフェラーリ (オリジナル・サウンドトラック) 発売日: 2019/11/15 メディア: MP3 ダウンロード 2020年になって公開された映画のなかでは現時点で個人的に最も感動したのは『ジョジョ・ラビット』であるが、客観的な「面白さ」や「出来栄えの良さ」…

『ジョジョ・ラビット』:「上手さ」の際立つ感動的な作品

ジョジョ・ラビット (オリジナル・サウンドトラック) 発売日: 2019/10/18 メディア: MP3 ダウンロード 私はそもそも「少年」が主人公の洋画が好きだ。と言っても『IT』や『スタンド・バイ・ミー』のような少年グループの青春ものは全然好きじゃないのだが、…

『キャプテン・マーベル』:「フェミニズム映画」と「ヒーロー映画」は両立するのか?

キャプテン・マーベル (字幕版) 発売日: 2019/06/05 メディア: Prime Video 『キャプテン・マーベル』は、一つのアクション映画やエンタメ映画として見てみると、世間的にもさほど評価されていないようである。アクションやエンタメとして明確な欠点があるわ…

『ブルー・ジャスミン』:幸福になれないアメリカ人

ブルージャスミン(字幕版) 発売日: 2014/10/24 メディア: Prime Video アメリカ人という人たちは、生活に要求する「最低限」の閾値がとにかく高い。贅沢が当たり前になっているのであり、他人に対する見栄という要素も強い。特に顕著なのが「住」に対する意…

『パラサイト 半地下の家族』:「格差社会」を描くことには失敗していないか?

『ジョーカー』と並んで、最近の「格差社会映画」ブームの代表的な作品だ。 この映画は「寓話」的な作品であると言われることが多い。寓話であるということは、作品のテーマを鮮烈に描くために細部のリアリティはあえて捨象しているということだ。 実際、こ…

「格差社会映画」の白々しさ

ずっと昔のイラク戦争のころ、爆笑問題の太田光がなにかのエッセイで、ベトナム戦争のあとにあれだけ反戦映画を製作したのに懲りずにまた戦争を起こして、そしてイラク戦争のあとにまたまた反戦映画が作られる、という状況について批判していた。該当のエッ…

『サイド・エフェクト』:後味の良い(!)悪女もの

サイド・エフェクト (字幕版) 発売日: 2014/03/07 メディア: Prime Video 先ほどの記事に続いてソダーバーグ監督の作品を紹介しよう。 私は後味の悪い映画というものが何よりも嫌いで、そのために大半のホラーやブラックコメディ作品が嫌いであるし、また「…

『コンテイジョン』:良質(?)なウイルスパニックもの

コンテイジョン (字幕版) 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video この映画は2011年に劇場で上映されたのを観に行って、あまり期待せずに観に行ったのだが当時はえらく感動してmixiで発表した「2011年年間ベスト映画」のトップ1にもあげた。しかし、当時…

"映画批評"についての覚え書き

批評について: 芸術批評の哲学 作者:ノエル キャロル 出版社/メーカー: 勁草書房 発売日: 2017/12/01 メディア: 単行本 映画を楽しんだり評価したりする際に何を重視するか、というのは映画ファンの間でも人によって異なるところだ。例えば、撮影の仕方や画…

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』:ダラダラした展開はキツいんだけどアダム・ドライバーはよかった

私がはじめて一人で劇場まで行って観た映画は、テリー・ギリアム監督の『ローズ・イン・タイドランド』である。その当時は高校二年生で爆笑問題の太田光の著作にハマっており、太田がラジオか何かで『ローズ・イン・タイドランド』をお薦めしていたから影響…

『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』:犯人がバレバレなのはいいんだけど、ポリコレ要素が不愉快

ミステリーといえば「誰が犯人か?」ということを頭をひねって推理する知的な面白さを連想するものだが、実は、ミステリーには別の種類の面白さもある。それは、自分勝手な理由で相手を殺したうえに自分の罪を他人になすりつけて素知らぬ顔をしている犯人の…

『マリッジ・ストーリー』:スカーレット・ヨハンソンがすごかった

スカーレット・ヨハンソンといえば唇と胸と身体だけの女優というイメージが強かったが、『マリッジ・ストーリー』では演技がすごかったので見直した(これは私だけの偏見に基づいた感想ではなく、少なくとも2名以上の知人が「スカーレット・ヨハンソンとい…