THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『SPY』+『メリーに首ったけ』


●『SPY

 

 

 

 ジェームズ・ボンド的なイメンスパイであるジュード・ロウの補佐役をやっていた主人公のメリッサ・マッカーシーが、復讐のためにスパイ活動に志願したところ意外な才覚が判明して、そんでヌケてるコメディリリーフジェイソン・ステイサムが要所で邪魔したり助けたりしてくる。
 スパイアクションはガワでしかなく、太っちょな見た目や周囲の扱いから自分に自信がなく自己卑下的であったヒロインが仕事で活躍することを通じて自信を身に付けて、イケメンに対しても堂々と接することができるようになってセルフ・エンパワメントして「あたしらしい生き方」を発見するみたいな、いかにも批評家とかが絶賛しそうなOL応援物語である。そしてかなりコメディ調であり、そのせいで展開はグズグズグダグダしている。で、そこまで笑えるというものでもない。
 しかしジュード・ロウは『キャプテン・マーベル』といい『リズム・セクション』といい、ヒロインの年上の指導者でありながら「有害な男らしさ」だかなんだかによってヒロインの自立なり自信なりを抑圧してくるイヤなヤツで、でも最終的には「自分の本当の強さ」を勝手に発見したヒロインによってやっつけられたりギャフンと言わされたりする、という役柄がやたらと多い。なんというかイケメンではあるけれど薄毛でちょっとムカつく顔であるところが女性の嗜虐心をそそるのだろうか。あるいは、人がいいのでそういう役柄を好んで引き受けているということかもしれない。

 

●『メリーに首ったけ

 

 

 

 

 中学生のときにVHSで両親と一緒に観た(アメリカ人のインテリはバカなので下品でくだらない映画をあえて家族と一緒に観ることが気が利いていて文化的だと勘違いしている)。

 内容はほとんど覚えていなかったけれど、観返してみると、まあ実に下品でくだらない。同じファレリー兄弟のコメディでも『Mr.ダマー バカMAX』や『ふたりにクギづけ』のほうがずっと面白い。ヒロインのメリーを演じるキャメロン・ディアスの可愛さとセクシーさを同時に兼ね備えた魅力を堪能できることだけが取り柄。
 メリーの人格とか意志とかはほぼ描写されないが、彼女を「トロフィー」として追い求めるベン・スティラーマット・ディロンなどの男たちの愚かさを描くのが主眼の作品なので、そこは欠点ではない。ただ、メリーに絡む男キャラがやたらと多いし、途中でマット・ディロンが出張り過ぎてベン・スティラーのほうが主人公であることを忘れさせられたりするなど、妙に展開が複雑なせいでグダグダになっている。あと下品すぎてコメディとしてもいまいちだなあ。