『モンスターズ・インク』
『トイ・ストーリー』に次いで初期のピクサーの代表作的な作品ではあるのだが、子供向けのわりに生々しい感情をしていたり歪な展開をしていたことが印象的な『トイ・ストーリー』に比べて、『モンスターズ・インク』は良くも悪くも印象に全く残らない。デイズニーらしさもかなり薄くて、子供向けエンタメに振り切った感じの作品だ。
クローゼットの隙間からあらわれて子供を脅かしてその悲鳴をエネルギーに代えるモンスター界の「悲鳴産業」という設定や、温和なサリーと忙しないワゾウスキーのコンビのバランス、そしてモンスターたちから恐れられている「人間の子ども」がモンスター界に侵入してしまうことで起こる騒動……どれも悪くないのだが、ワクワクできるのは前半までだ。序盤におけるモンスターたちの「成績争い」のシーンは現実の会社員っぽい面白さがあったし、どこでもドア的な不思議な扉を通じて子供たちを脅かしにいくモンスターたちの姿にもワクワクするところがあったが、それらのオリジナティ溢れる設定が物語に関わってくるのも前半までである。後半はダラダラとしたドタバタ劇が延々と続くので、飽きてしまうのだ。
ディズニー作品や『トイ・ストーリー』に比べるとテーマ性というものは全く存在しないし、キャラクター描写の深みもない。ほんとうに、単なる子供向けのドタバタ劇なのである。2001年の映画なのでCGもいまから見ると古臭く、賞味期限切れした作品であるかもしれない。