『デンジャラス・ライ』
裕福な高齢の独身男性レナード(エリオット・グールド )の介護業を派遣で行っていたケイティ(カミラ・メンデス )とその夫アダム(ジェシー・T・アッシャー)は、レナードの死後に彼の残した隠し財産を発見する。家計が火の車となっていた二人ではあるが、財産を着服することにアダムが積極的な一方でケイティは罪悪感があって消極的だ。…しかしけっきょく着服してしまい、特にアダムが金を使い込んでいたところで、レナードの弁護士と名乗る女(ジェイミー・チャン)からレナードが財産を正式にケイティに相続させる遺志を示す遺言書を書いていたことを知らされる。喜ぶケイティ夫妻だが、あまりに夫妻にとって都合の良い展開に女刑事チェスラー(サッシャ・アレクサンダー )は疑念を抱いて彼女たちの捜査をはじめる。不動産業者を名乗る怪しい男(カム・ジガンデイ )もケイティに接触してきて…。
オチまで見るとかなり他愛のないサスペンス映画だ。真相は大したことがないし、その真相が明かされるクライマックスはぐだぐだとしている。悪人たちのキャラクターも実に薄い。
しかし、前半における、大金を手にしたことで夫婦の価値観の差が浮き彫りになって溝が出ていく様子を丁寧に描写しているところは面白い。善人で正義漢と思われていたアダムがどんどんと欲深く厚かましく傲慢な人間になっていって、ケイティがそれを嫌がる、というところはなんだか実際のカップルの間でもありそうなリアルな人間関係という感じだった。この前半の描写が光っていたので、最後まで見てしまったという感じである。しかしアダムのキャラクター描写も前半と後半とで一貫しないところがある点は残念だった。第三者的な悪人たちを登場させないで、ケイティとアダムの関係性の緊張に終始一貫させた方がよりオリジナリティがあって心に残るサスペンスとなっていたことだろう。