『水曜日のエミリア』
ニューヨークで弁護士として働くエミリア(ナタリー・ポートマン)は、上司でありジャック(スコット・コーエン)を彼の妻のキャロリン(リサ・クドロー)から寝取って略奪婚した。しかし、エミリアとジャックの初めての子であるイザベルは、生まれて間もなく死んでしまった。ジャックとキャロリンの息子ウィルは生意気ざかりであり、イザベルの死により心を塞いでネガティブになったエミリアとウィルの関係はぎこちない。それでもエミリアはなんとかウィルと仲良くしようとするのだが……。
「赤ん坊の死」というテーマが全編に影を差しているが、重苦しくはなり過ぎずに、上質のファミリードラマに仕上がっている。なんといっても、ウィルと悪口を応酬したりするなどの子どもっぽいところがありながらも神経質で自己中心的でもあるが観客が好感を抱ける魅力もたっぷりな、エミリアのキャラクターの複雑さや実在感がいい。これは役者がナタリー・ポートマンであることにも相当助けられており、儚くて可憐であり大人っぽさと子供っぽさが同じ顔に同居している彼女じゃないと演じられない役柄でもあるのだ。もう少しゴリラに近いブロンド系の俳優が演じていたら一気に魅力のない主人公となっていたことだろう。
脇役の描写に関しては、やはり夫の連れ子であるウィルが…というか、ウィルとエミリアが会話するパートが印象的だ。「子どもと対等な立場で話す」というキャラクター自体はよくあるものだが、実際に子どもと口げんかになって負けそうになったりするキャラクターはなかなかいないし、ウィルを喜ばせようと思ってやったことが考えが足らず失敗ばかりする、という点がいい。
お話としては、略奪婚とか元妻に対する不貞などなどを超えて互いを許しあったり自分の罪を自分で許す、ということがテーマであるだろうか。エミリアの父親はほとんど登場しない脇役であるが、エミリアが泣きながら浮気者の父親を許す場面は記憶に残る。『フレンズ』のフィービーのイメージが強いリサ・クドローも、ヒステリックな教育ママの前妻という役柄にピッタリであった。エミリアの夫であるジャックが物語上のキャラクターとしても役者としてもやたらと印象が薄いところが難点であるだろうか。