THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『アニー・ホール』

 

アニー・ホール [DVD]

アニー・ホール [DVD]

  • 発売日: 2006/02/01
  • メディア: DVD
 

 

 ノア・バームバックの監督作品を見るたびに「ウディ・アレンの作品に似ているなあ」と思わされているので、本家のウディ・アレンのなかでもいちばん評価の高い代表作を再視聴。

 大人同士の恋愛の話であるが、不思議なことに、学生時代はもっと面白く観れたものが自分が大人になってからだと楽しめない。これは小説を読むときにも度々あることなのだが、年をとって感性が摩耗したことが原因ではなく、年をとることによって自分の人生の可能性がどんどん減ってしまい、物語の登場人物たちは自分とはまったく縁遠い存在であり今後もこの映画で描かれているような恋愛や生活や社交を自分はすることはないであろう、ということがわかってしまったからだ。こう考えると、逆説的に、映画や小説などの物語には若いうちに触れておくに限る。若いということは可能性が沢山残っているということなので、様々な立場や様々な世界の人物に共感したり親近感を持ったり興味や好奇心を抱くことができる。

 

 しかし改めて『アニー・ホール』を見てみると、ノア・バームバックの作品にも感じられるような「世界の狭さ」が目についてしまう。登場人物はみんな知的な会話を楽しめるインテリで、金に余裕があり、ニューヨークという都会に住んでいる。さいきんはアメリカ映画を見るたびにこのごく限られた世界に住む連中の人生だったり恋愛だったり悩みだったりいざこざだったりばかりを魅せられるのでうんざりしていたが、もしかしたらウディ・アレンがその元祖なのかもしれない。

 

 映画の内容としては、「人生は寂しく、みじめで苦しく、しかもアあっという間だ」とか「僕を会員にするようなクラブには入りたくない」とか「男女の関係はおよそ非理性的で不合理なことばかり、でも、それでも付き合うのは卵がほしいから」とかの名言は印象的だが、ストーリーはいま観てみるとヒロインであるアニー・ホールの描き方が表面的で物足りない。マッチョな映画でもなんでもないのだが、フェミニズム以前という感じは確実に漂う。主人公のウディ・アレンスタンダップ・コメディアンであるが稼ぎが良いらしく、ダイアン・キートン演じるアニー・ホールと付き合いながら彼女のことを精神的だけでなく経済的にも色々と支援しているようだ。神経質でネガティブで他者非難的なダメ男な主人公であるが、経済的にはしっかり成功しているということがこのテの映画のポイントである(だからこそ、大半の人にとってはよく考えてみると他人事で共感できない話ともなっている)。ヒロインや主人公の設定まわりの都合の良さはちょっと村上春樹作品を思い出さなくもなかった。

 コメディアンが作っている映画だけあって端々にあるユーモアはしっかり面白い。しかし、同じようにスタンダップ・コメディアンを主人公にしたシットコムである『となりのサインフェルド』の方が、コメディ要素に特化しているだけあってずっと笑えることはいうまでもない。そういえばあれもニューヨークが舞台だ。