『マンハッタン』
『アニー・ホール』と並ぶウディ・アレンの代表作だろうか。冒頭に描かれる、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」を背景曲としながらたっぷり尺を取って描かれる白黒のニューヨークの風景はいつ見ても印象的だ。
しかし、この映画の良いところはそこまでだ。なにしろ主人公の42歳のおっさんが17歳の少女と付き合っているところが気持ち悪い。おっさんと少女の恋愛ものというものは邦画や漫画などでもよくあるだろうが最近では社会の倫理観が進歩しているので恋愛の匂わせであったり実際に付き合うのは少女がちゃんと成人してからであったりするものだが、この映画では堂々と主人公と少女がセックスしている。さすがにセックスシーンが直接描かれることはないが、少女との会話のなかでやたらとセックスのことが出てくるのだ。これがもう実に気持ち悪いし、ついでに言うと主人公はこの少女に対してさほど真剣でもなく、友人の不倫相手に惹かれてしまったりする。さらにいうと主人公は元妻との間に息子も設けているのだ。そんな中年男がどっちつかずの恋愛感情や自分探しに悩んでいるのだが、ほんの数十年前である1970年代ではよくこんなのが許されていたなと驚かされてしまう。ダイアン・キートンが演じるヒロイン(主人公の友人の不倫相手)も『アニー・ホール』のヒロインに比べるとかなり鼻につくキャラクターなってしまっている。全体的に画面だけが綺麗で、登場人物には誰にも共感できない内容だ(17歳の女の子はいい性格をした子ではあるのだが、そもそも中年男と付き合っている時点で人としてまともではない)。