『ある決闘 セントヘレナの掟』
メキシコ人の死体が川に次々と流れてくるという異様な事件の詳細を探るため、保安官である主人公(リアム・ヘムズワース)は、カルト的でカリスマ的な指導力を持つ謎の説教師(ウディ・ハレルソン)が支配する田舎町に潜入捜査を命じられる。そして、この説教師は主人公が幼い頃に彼の父親を殺害した人物であった。しかし、当初は主人公の目的は復讐にあるわけでもなく、職務に忠実に捜査を行う。だが、メキシコ人の殺害が説教師の指導によるものが判明して、さらに一緒に町に連れてきた妻にまで手を出された主人公は、町の住民たちと説教師に対決を挑む…。
「ウェスタン・ノワール」と銘打たれており、西部劇でありながら定型から外れた不気味で異質な物語が展開される。ウディ・ハレルソンが演じる役はコーマック・マッカーシーの小説『ブラッド・メリディアン』のホールデン判事や西部劇漫画『RED』のブルーを思い出させるキャラクターとなっている(三人とも虐殺を先導するカルト的カリスマ性を持つキャラクターであり、また、ハゲであるのだ)。とはいえ、直接の元ネタは『地獄の黙示録』のカーツ大佐である可能性が高そうだ。主人公は正義漢ではあるが印象の薄いキャラクターとなっているので、この映画はウディ・ハレルソンの怪演でもっているようなものだ。
それにしても画面が地味だし、話の展開に起伏がなくローテンポであるので、血生臭い物語が描かれて決闘シーンまであるのに全体的にかなり地味で退屈な内容となっている。『トマホーク ガンマンvs食人族』もこんな感じの内容であったと思う。
他の人のレビューを見てみると「眠気に負けてしまった」という感想が書き込まれていたが、それも仕方がないという感じだ。また、上述したように敵役の説教師のキャラクターは特徴的でありながらも実は他の映画でもたまに見かけるようなものであり、それほどのオリジナリティがあるわけでもない。同じ内容をハイテンポや飽きさせない演出で描いてしまうと途端にB級なショッキングロ映画になってしまうので、ローテンポで文芸作品っぽい映画にするのもわからないではないのだが、それにしてもつまらない。なんとなく"すごそう"な雰囲気は漂っているが、実際には大した映画ではないだろう。