『トゥー・ラバーズ』
2年前に婚約者に裏切られてフラれてしまい傷心のまま両親の家の下で生活をしていた繊細で芸術家肌で躁鬱病持ちでアダルトチャイルド気質な主人公（ホアキン・フェニックス）が、父親の仕事相手の娘（ヴィネッサ・ショウ）と知り合う。実はこの女性は主人公の姿を見て一目惚れしてしまい、紹介してくれるように向こうから頼んできたのだ。相手は主人公の弱い部分も受け止めてくれる包容力のある女性であり、いい感じの恋愛関係になる。しかし、この女性と知り合ったと直後に、主人公は近所に住む別の女性（グウィネス・パルトロー）とも知り合う。この女性はエネルギッシュで魅力的だが、妻子持ちのおっさんと不倫関係にあり、本人も精神的に不安定なところがある。しかし主人公はこちらの女性により惹かれるようになり、その関係に深入りしてしまう…。
要するに題名通り二人の恋人がいて二股をしている主人公の話である。この二股がバレたりそれによって主人公が罰を受けるということは最後までない。ヴィネッサ・ショウが演じる女性は向こうから一目惚れして、主人公のリストカット跡を見ても動じずに「あなたの世話をしたいわ」と言ってくれる優しさを持っており、それでいて主人公は別の女と肉体関係を持つわけだから、かなり主人公にとって都合の良い物語となっていることは否めない。
しかし、こういう作品を見ているとイライラしたり嫌な気持ちになることが多いわたしであるが、不思議とこの作品にはさほど負の感情が生じなかった。なにしろ主人公自身が婚約者に振られたり自殺未遂をしたりと「かわいそうな人」であるし、二股といっても結婚しているわけではないのだからまあそこまで罪が重いことでもない。優しくて自分のことを親身に思ってくれる女性がいながら、あまり自分の方を向いてくれない不安定だけどエロい女性の方に気を惹かれてしまう、というのもまあ男としてはありがちな話であるだろう。だからこの映画で描かれているような物語は実際の社会でもいくらでも起こっていそうなものだと思ったし、主人公の苦悩も（自分勝手なものであるとはいえ）理解や共感ができる範囲内のものである。
とはいえ、ムカつかないというだけで、面白い映画かと聞かれたらさほど面白い映画ではないと答えるしかない。ヴィネッサ・ショウは素敵だがグウィネス・パルトローはそんなに好きな顔立ちではないので、こちらとの恋愛がメインなのもわたし的にはテンションが下がった。
