『アベンジャーズ』
『アベンジャーズ』が日本で公開されるちょうど直前に海外旅行しており、行きか帰りかの飛行機の機内放送で鑑賞した。みんなよりも一足早く話題作を観れる優越感はあったものの、後半の素晴らしいアクションシーンを観るにつれてちっちゃい画面で観てしまったことを後悔したものである。その後も、昨年と昨日に再視聴したが、どちらも配信サイトを使って家のPCで観たものだから、けっきょく大画面では見れずじまいだ。勿体ない。
ニューヨークに敵の軍団が襲来してからのアクションシーンが最大の見せ場であり、敵の種類や攻撃方法は単調ながら6人のヒーローが入れ替わり立ち替わり活躍して彼らの魅力をこれでもかというほどに描写して、間にコメディやおとぼけも挟みつつ惚れ惚れするような長回し撮影も用意するなど、もう完璧と言って差し支えない。何度でも見ていられる。
また、アクションばかり印象に残りがちだが、この映画は序盤における初対面のヒーローたちの会話劇もかなり優れている。せっかく集まった戦力が意見や価値観の違いやしょうもない嘘やプライドのために話がこじれて足並みが合わず…という展開自体は通常であれば観客のテンションをサゲるものであり、「どうせ最後には一致団結するんだからさっさとこの喧嘩パートを終わらせてくれよ」と思ってしまうものなのだが、この映画は喧嘩パートもうまく処理している。「顔見せ」のためだけに単独作品を制作しただけあって、4人のメインヒーローは最初からしっかりキャラが立っているから、余計な説明や準備を抜きにいきなり個性的なキャラ同士をぶつけてその科学反応を描写することができるのだ。その他にも、ニック・フューリー(サミュエル・デイヴィス)とキャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)の「10ドル」をめぐるやり取りや、コールソン(クラーク・グレッグ)が所持しているトレーディングカードのくだりなど、いかにもアメリカ映画的な"気の利いた"くだりが多い。会話やちょっとした描写に挟まれるジョークの量も豊富で、他の作品との設定がどうの今後の作品への伏線がこうのなどのオタク的なそれを除いても、単純に一本の映画として情報量が多くてかなり贅沢なつくりになっている。
敵役のロキ(トム・ヒドルストン)はいかにも小物で陰湿な性格をしているが、だからこそアベンジャーズの面々を挑発して、結果として彼らの魅せ場をつくる、いい意味での「引き立て役」の役割を全うしている。また、アイアンマンやキャプテン・アメリカをメインに描きながらも実際にいちばん強いのはハルク、という描写も心憎いところだ(ロキがハルクにボロボロにやられるシーンはいつみても痛快である)。単独作がいまだ公開されていないブラックウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)も、この映画の特に前半では主役級の働きを見せてくれる。『エンドゲーム』まで見終わった後に振り返っても、ブラックウィドウはアイアンマンやキャプテン・アメリカ以上にアベンジャーズの中核となっているフシがあって、このキャラクター描写や設定はやっぱり絶妙だなと思う。