THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』

 

マイティ・ソー/ダーク・ワールド(字幕版)

マイティ・ソー/ダーク・ワールド(字幕版)

  • 発売日: 2014/06/18
  • メディア: Prime Video
 

 

 MCU作品はあらかた観てきたが、『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』と『インクレディブル・ハルク』だけは未見だった。どちらも、かなり評判が悪い作品であるからだ。

 しかし、いざ覚悟を決めて『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』を観てみると、思ったほどには悪くなかった。決して名作でも良作でもなく、凡作であることには違いないが。

 異界が舞台となる場面が長過ぎて、地球における場面もロンドンなどの観光地が中心となってしまったために、1作目の『マイティ・ソー』にあった「超常と日常との交差」的な面白みを欠いているのは残念だ。

 ロキ(トム・ヒドルストン)がキャプテン・アメリカに変身するシーンを除けば他のMCU作品との繋がりもないし(1作目のようにシールドの面々やホークアイを出して話に関わらせたら面白さが増していたと思う)、敵はファンタジーもののアクション映画としてありがちかつ最も面白みのない存在である、異形ばかりの「闇の軍勢」だ。『ジャスティス・リーグ』も敵軍団もこのタイプであったが、異形な時点で感情移入が難しくなるし動機も"古代からの恨みの報復"とか"世界の支配"とかしょうもないものなので敵側のドラマがなくなってしまう。『ダークナイト』やサム・ライミの『スパイダーマン』三部作を見ればわかるように敵役をオリジナリティのある存在にしたり敵側にもドラマを与えるだけで話がぐっと面白くなるのに、アメコミ映画はそれを怠ることが多いのだ。

 しかし、前作と同じく「恋する乙女」を演じるナタリー・ポートマンをたっぷり堪能できるところが素晴らしい。彼女が演じるジェーン・フォスターがソー(クリス・ヘムズワース)に恋心を芽生えさせたのは前作の後半であったが、今作では出だしからソーのことで頭いっぱいで2年間も会っていないのに他の男とデートすることもままらないナタリー・ポートマンの姿が描かれて、エンドクレジット後にも帰ってきたソーとチューするシーンで締められるなど、最初から最後までラブロマンスの要素が押し出されている(そもそも、今回ソーが戦う主な動機もジェーンを助けるためだ)。MCUはあまり可愛い女優や美しい女優を使ってくれないので、ナタリー・ポートマンが出ているところが『マイティ・ソー』シリーズの他にはない強みと言えるだろう(ナタリー・ポートマンは3作目で降板してしまうけれど)。

 ジェーンの助手のダーシー(カット・デニングス)も前作に引き続いて可愛らしいコメディリリーフとなっているし、『アベンジャーズ』のおかげでエリック・セルヴィグ博士(ステラン・スカルスガルド)もキャラが立っている。異界パートではロキが出てくる場面の一部を除けばごく真面目で深刻な話が続いてしまうので、コメディ要素は地球の面々に任されている感じだ。

 前作に比べてウォリアーズ・スリーの出番が少なっているところは残念だ(浅野忠信なんか冒頭でソーに「お前はここに残れ」と言われてそれで退場だし)。しかし、前作や『アベンジャーズ』での敵役であったロキとの共闘も、テンプレながらそれなりにドラマチックなものとなっている。ソーが脳筋的なキャラクターなので、小細工と策略を弄するロキとは対比的でいいコンビになるのだ。また、彼のトリックスター性を活かした最後のオチも、後の作品のことを知らずに劇場で見ていたらなかなか驚かされていたかもしれない。