『日曜日の憂鬱』
Netflixオリジナルのスペイン映画であり、英語吹き替えも日本語吹き替えもなし。わたしは英語のリスニングに問題がないぶん、たまに英語以外のヨーロッパ語や韓国語の映画を見てしまうと映画に集中することが難しくなってしまう。韓国人が日本語や英語を喋るには多少違和感があるが、スペイン人やフランス人が英語を喋ることには全く違和感がないのだから、グローバルスタンダードである英語の吹き替えはどの作品にも用意してほしいものだ。
夫の金のおかげで有名になり贅沢な暮らしをして毎晩のようにパーティーを開いている老女アナベル(スシ・サンチェス)のもとに、30年以上前に捨てた前夫との間の娘のキアラ(バルバラ・レニー)があらわれる。8歳の時に捨てられて現在では40代前半であるキアラは、アナベルに対して「10日間一緒に過ごして」と要求する。アナベルはキアラのことを警戒しつつも、彼女の要求を許諾して、キアラの住む田舎に二人で訪れるのだが…。
BGMなどはほとんどなく、登場人物が自分の思いを口にするシーンもあんまりなかったりして、「静謐」なシーンがこれ見よがしになんどもなんども出てくる。静謐すぎてうるさいくらいだ。他の点に関しても、全体的に「芸術的な映画でござい」という自己主張が感じられて鬱陶しい。人が「ヨーロッパ映画」に対して抱く悪いイメージの見本的な作品であると思う。ストーリーも大したことはない。
とはいえ、芸術的な映画だけあって、映像はかなり美しい。ついつい惹きこまれてしまうシーンも多い。ただ、全体的に暗かったり寒色な場面が多くて、映像面でもメリハリはないように感じられた。また、いかにも「不穏」な感じを漂わせるシーンが多々あるが、その「不穏」の表現方法が安っぽくて露骨ではあったと思う(死にかけの鳥にキアラがトドメをさすシーンとか、墓場から職員に取り出されている白骨死体をアナベルが目撃するシーンとか)。
アナベルはおばあちゃんであり外見的な魅力はないし、演技も上手いかどうかはよく分からない(こういう難しい系の作品ほど「これって役者が誰でも変わらないんじゃないか」となることが多かったりする)。一方で、キアラを演じるバルバラ・レニーはかなりの美人であり、映像美にもマッチして映えている。彼女の美しさを楽しめるという点だけでは、価値のある映画かもしれない。