THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『AKIRA』

 

 

 池袋グランドシネマサンシャインIMAXで鑑賞。グランドシネマサンシャインIMAXは東京でいちばん大きいらしいが観にいく機会がなかったし、『AKIRA』にもこれまで興味を抱けなくて、珍しく劇場で上映されているこの機会を逃すと今後一生観る機会がないだろうな、と思って観にいった。

 

 原作漫画は大学生時代に1冊か2冊ほど立ち読みで読んでいた。内容はさっぱり覚えていないが、面白くなかった、と思った記憶だけはある。

 この映画も「珠玉の名作という評価はされているけどたぶんカルト的な人気で、映像や音楽はすごいけれど難解な作品なんだろうな…」と思って、あまり気乗りせずに観にいったが、存外に少年漫画的な熱血さがある素直なエンタメ作品であり、楽しめた。

 SF要素はいま観ると陳腐なものであるし、オリンピック中止という"予言"が当たったことばかり取り沙汰されるが、インターネットすらない2019年の東京の描写にリアリティはない(原作は1980年代に書かれた作品だが、ちゃんとSF的考証をしていればもう少しリアルな東京が描けていただろう)。超能力を使える子どもたちの設定もいまとなると使い古されたものであるし(あと純粋に見た目が気色悪いしキンキンした子供声がうるさくて不愉快だ)、有能で自己犠牲的な軍人と保身のことしか考えない無能な政治家との対比は日本のオタク作品における典型的な表現で辟易させられる。芸能山城組による音楽も、序盤における金田たちとクラウンとの抗争シーンで流されたときにはビル群が描かれる背景の美しさとあわせて効用したが、オリエンタルっぽさがあざと過ぎるし劇中でずっと流されているとしつこいかなという感じがする。

 しかし、この映画のストーリーの軸である金田と鉄雄のキャラクター性や二人の関係性は、王道的ではあるが実に良い。登場シーンでは生意気ながらもあどけなかった鉄雄がどんどんと能力を覚醒させていって、それに伴い金田に対して抱いたコンプレックスが表面化していって、いくら能力を身に付けても精神的には金田には敵うことなく自滅していく…という展開が切ない。執拗に求めた「金田のバイク」もけっきょく扱いきれないままであったり、救いの手を差し伸べてくれたカオリを圧殺してしまうところは悲しい。金田の方はいかにも1980年代のマンガ的な「軽薄だけどやるときはやる」というキャラクターで、単体だとテンプレ的過ぎて魅力がないが、鉄雄との関係性によって魅力が惹きたつキャラクターとなっている。また、絵柄が似ていることから、なんとなく悟空とベジータの関係を連想した。

 ケイやカオリなどの女性キャラクターたちの存在感の薄さも特徴的だ。山形や甲斐など、金田のグループの仲間たちの方が、端役なのにずっと印象に残る。学生運動をモチーフにした若者描写はちょっと古臭さがひどいが、まあ80年代アニメ的な良さはあった。