THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『レインディア・ゲーム』

 

レインディア・ゲーム (字幕版)

レインディア・ゲーム (字幕版)

  • 発売日: 2016/11/01
  • メディア: Prime Video
 

 

 どうみても大したことがない作品であるしどちらかといえば駄作であるが、主人公がベン・アフレックでヒロイン(悪女)がシャーリーズ・セロンで脇役にダニー・トレホがいてと、いまから思うと役者陣が無駄に豪華である。

 囚人であったベン・アフレックが、同じ監房で仲良くなったが出所直前に他の囚人に殺されてしまった友人の文通をしていた相手の女の子に、出所直後のムラムラを解消するために友人のフリをして会いにいったら、その女の子の兄であるチンピラが計画したカジノ強盗計画に巻き込まれる羽目になり…というストーリー。

 カジノといってもラスベガスではなく、先住民が経営している町の小規模カジノである点が異質である。チンピラは悪役としてしょぼいしシャーリーズ・セロンも脱いだら意外と大したことがなくてしょぼいしベン・アフレックも持ち前のションボリした顔をしていて、画面作りも映像もしょぼくてと、全体的にションボリしたお話であることは間違いがない。途中で明かされる真相だけはちょっと驚きだが、伏線などは大したことがないし明かされ方も全然洗練されていないし、その後の展開もパッとしない。

 ベン・アフレックは好きな俳優であるのだが、「作品がつまらなくてもベン・アフレックが画面に映っているだけで満足できる」という程のパワーは残念ながらない。しかし、悪人には決してなれないが善人にもなりきれず、完璧超人では絶対になくて、トラブルに巻き込まれて悲惨な目にあったり苦労したりしながらもがんばって事態を解決する……というこの映画や『ゴーン・ガール』の主人公のようなキャラクターが似合う、個性的でありながらも絶妙に小市民的で共感できる顔をした俳優であることは間違いない。私生活面でのトラブルも含めて、なんとも応援したくなる人だ(彼が監督・主演の『バットマン』はけっきょく実現しなかったが、ぜひ見たかったものである)。

 この映画に関しては何度も言うように大した作品ではないのだが、オチがやたらと爽やかなハッピー・エンディングとなっていて、そこだけは妙に好感を抱ける。クリスマスが舞台で強盗もサンタの格好をして行うのだが、サンタクロースよろしく、強盗で得たお金を町の人々のポストに配りまくるという変なオチなのだ。また、サンタの格好をした人間たちの死体を冒頭に描くせいで「主人公が死んでしまうのか」とハラハラさせられる構成になっている点もいい。ベン・アフレック演じる主人公が善人でないのに感情移入できてしまう人物になっていて、また悪人連中はしっかり悪人なので、バッドエンドにならないように願わさせられてしまうのである。