『イン・ザ・ハイツ』
もうすぐ上映終了なので、早朝から駆け込みで鑑賞。
ミュージカル映画としてもとりわけミュージカルシーンが多く、セリフで進行するシーンはあまりない。そして、湿っぽいバラード的な曲の数は少なく、ラテン系らしい陽気なミュージックが大半なので、そういう点ではノリノリな感じが続く。登場人物の服装や髪色から街並みや背景までカラフルで鮮やかであり、ダンスとか動きとかもワチャワチャしていて、高揚感のある場面がずっと続くのだ。また、ラテン系らしくお尻とか胸を強調したダンスをする女性がいっぱい出てくるし、あとラップソングもいっぱいあったりして、そういう点では他のミュージカル映画に比べてもずっと贅沢で豪華と言えるかもしれない。……だが、それは裏を返せばメリハリに欠けているということであり、冒頭のミュージックで感じた高揚感が持続することはなく、むしろダレてしまった。さらにいえば、ストーリーは(終盤にちょっとだけ仕掛けがあるものの)かなりシンプルで凡庸であり、群像劇であることもロクに活かせているとは思えない。このテのミュージカルを見るたびに、ミュージックのメリハリという点でもストーリーのツイストという点でも、『ラ・ラ・ランド』は偉大であったのだなと再認識させられる。アメリカのミュージカル映画なんてどれもこれも「夢追い人」の物語であるに決まっているのだが、「夢」の描き方も『ラ・ラ・ランド』は際立っていた。
ラテン系というマイノリティの「夢追い人」たちの物語であること、そのなかでも名門大学への進学について挫折しそうにしたりしなかったしている女性キャラクターのエピソードなどについては、昨今流行りのメリトクラシー論を思い出さないでもない。
また、おばちゃんが大量に集まって下世話で下ネタな噂話をしまくる美容院が町にとって重要なコミュニティになっているというところには『パーマネント野ばら』を思い出した。
美容院ではおばちゃんたちが下ネタを言っていて、男はみんなムキムキで女はみんなケツがデカくて、どの住民もエネルギッシュで陽気で……というまさに「ラテン系」な世界観には胸焼けがしたり苦手意識を抱くところもあるが、主人公は登場人物たちのなかではマッチョさに欠けていて内向的な雰囲気が漂っているというところに、かろうじて共感の余地がある。また、メリッサ・バレラが演じるヒロインはセクシーさがちょうど良くて魅力的であった。