THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『パーマネント野ばら』

 

パーマネント野ばら

パーマネント野ばら

  • 発売日: 2016/04/15
  • メディア: Prime Video
 

 

 西原理恵子の漫画を『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督が映画化した作品。西原作品らしく高知県のヤンキー地域というか貧困地域が舞台であり、登場人物の大半は土佐弁だ。

 ガラの悪い地域が舞台であるが主要登場人物の大半は女性であり、無責任でろくでなしの男に振り回されて人生を台無しにされる若い女性や酸いも甘いもわきまえて強かに生きるおばちゃんたちなどが多数登場する。主人公の家がパーマ屋さんを営んでいるので、おばちゃんたちだけでなく若い女性陣にも強烈なパーマをかけている人が登場する。そんな中で地味な黒髪をしており、夫と離婚したシングルマザーであるとはいえいまは安定していそうな学校教師と付き合っていて本人自身もしっかりものである主人公(菅野美穂)と、同じく地味な黒髪で控えめな性格をしていながらしっかり男運は悪くろくでなしとばかり付き合っている主人公の友達の「ともちゃん」(池脇千鶴)や、フィリピンパブを経営しておりかなり派手な格好をしている美人でありながらやっぱり男運がわるい「みっちゃん」(小池栄子)のエピソードが描かれる。

 登場人物の大半がヤンキーやシングルマザーであり貧困地域であることを除けば、ストーリー構成も画面やBGMの感じもいわゆる「田舎の日常もの」然とした作風が続く。…ところが、実は主人公には秘密があって…というのがこの作品のポイントとなっているだろう。つまり、終盤になって意外な種明かしがあり、その途端に作品のジャンル自体が変わる、という構成だ。…なのだが、この大オチが実にしょうもない。オチ自体もありきたりだし、ご丁寧な「種明かし」シーンもセンスがない。とにかく露骨で作為的だし、あえて「日常もの」風に作って観客を騙してやりましたという製作陣のドヤ顔が透けて見えるようで不愉快になるくらいだ。

 また、何しろ登場人物の大半が頭が悪くて品がないので観ていて共感できない。頭が悪くて品のない登場人物ばかり出てくる作品であっても彼らに観客が共感することのできるような描写や構成を実現できている作品は存在するが、この作品にはそこまでの能力はない。これは監督だけでなく、そもそも西原理恵子という漫画家自体が貧困層やヤンキー層に共感や理解を示しているようでいて本心では彼らのことを画一的でステレオタイプ的に見ていて、彼女が描くキャラクターたちも底の浅い書き割り的なものになってしまう、というところが影響しているのだろう。主人公が頭の悪くて品のない連中から一歩引いた立場にいることも(そのこと自体がオチへのミスリードや仕掛けにつながってはいるのだが)、また作品への感情移入を阻害してしまう。

 良かったところを挙げるとすれば、小池栄子演じる「みっちゃん」は実に色っぽくて可愛くてよかった。菅野美穂も、繊細さや神経質さを強調した最後あたりの顔が儚い感じで魅力的だ。池脇千鶴もまあそこそこ可愛い。あと、高知の自然や田舎の風景は視覚的に楽しめるし、パーマネントのセットも実にそれっぽい感じでよかった。