THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『突破口!』

 

突破口! [Blu-ray]

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  • 発売日: 2019/09/04
  • メディア: Blu-ray
 

 

『ダーティ・ハリー』のドン・シーゲルが監督、主演はちょっとチャールズ・ブロンソンを彷彿とさせるウォルター・マッソーという人。銀行強盗をして逃亡に成功したと思ったら偶然にもそこがマフィアがマネーロンダリング用に使っている銀行だったために、マフィアから殺し屋を差し向けられることになる、というシンプルなお話だ。

 銀行強盗は主人公の妻を含む複数名のチームで行なったが、妻は早々にやられてしまうし、威勢だけが取り柄の青二才の相棒も殺し屋にあっけなく始末される。また、主人公は仲間たちに対して決して情が深いわけではなく、自分の生存のためには妻の死体も隠蔽工作に利用するし相棒すらも身代わりにする。さらに言うと主人公が何を考えてどういう思惑で動いているかは最後の方までわかりづらく、ストーリーのプロット自体はシンプルであるはずなのに、なかなか一筋縄では理解しづらい構成になっているのだ。

 主人公たちを追う殺し屋が登場するのは中盤からであるが、アンドリュー・ロビンソンが演じる白いハットをかぶったその姿は、『ノーカントリー』でウディ・ハレルソンが演じた殺し屋を彷彿とさせる。過剰なまでにプロフェッショナル然と振舞っておきそんな自分に酔っているナルシスティックなところがありながらも、結局は追跡対象にしてやられてお陀仏になる、というところまで一緒だ。実際、『ノーカントリー』はこの作品を参考にしているのかもしれない。

 主人公たち銀行強盗組は冒頭で早々に警官を射殺するし、善人ではまったくない。つまり、この作品は銀行強盗とマフィアという悪と悪との戦いを描いているのだ。そのために勧善懲悪的な爽快感はないが、その代わりに、ハードボイルドの世界でのシビアなサバイバルの感じが楽しめる。とはいえ、主人公をちょっと有能で格好良く描き過ぎているところもあるが。