THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『カリスマ』+『ボーン・コレクター』+『マンディ/地獄のロード・ウォリアー』+『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』+『シャーロック・ホームズ』

 

 つまらなかった映画シリーズ。

 

●『カリスマ』

 

 

 

 もともとシュールさがウリの黒沢清作品ではあるが、『カリスマ』ではホラー要素を薄めてコメディ要素が薄められているためにシュールさが増し過ぎており、そのくせ絵面は地味なので、なんだか惹かれるところがない作品になってしまっている。「カリスマ」の木をめぐって登場人物たちが繰り広げる議論はまあまあ興味深いし、陽気な音楽が印象に残ったりはするのだけれど。しかし『回路』と続けてみると黒沢作品の「思わせぶり」感もなんだか腹が立ってくるな。

 

●『ボーン・コレクター

 

 

 

デンゼル・ワシントン演じる主人公の、ハンニバル・レクターを彷彿とさせるような「安楽椅子探偵」的な設定はそこそこ面白い(レクター博士と違ってこちらはちゃんとした善人だけど)。主人公の身の回りを世話する黒人看護師さんも魅力的なキャラだし(だからこそ死んでしまうのが残念だ)、なにより、アンジェリーナ・ジョリー演じる女性警官は「善性」や「女性としての強さ」がしっかり伝わってきて実に印象的だ。『チェンジリング』といい『モンタナの目撃者』といい、アンジーは善と強さを体現する女性を演じるにあたってはピカイチである。
しかしながら、作品としては1990年代後半~2000年代前半に特有の過剰さや安っぽさが全面に出ていて、殺害シーンの絵面も猟奇的なわりにインパクトには薄くて印象に残らず、犯人も主人公に対する私怨で行動するしょぼい人間であるし、推理ものとしてのおもしろさもなくて、ダメダメ。原作は当時にベストセラーになっていたはずだけど、どんな感じなんだろう。

 

●『マンディ/地獄のロード・ウォリアー』

 

 

時代遅れの「カルト的名作」になることを狙ったかのような、そしてその狙いがすっぽりと外れた作品。ゴミ。前半がかったるいくせいに主人公が復讐を始める後半も爽快感はそれほどでもなく、サイケデリックな色彩や演出は押しつけがましくて鬱陶しい。ニコラス・ケイジが出ているからいいってもんじゃないでしょう。

 

●『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ

 

 

 

敵方の設定は凝っているし導入部分にも惹きこまれるしで、007シリーズ内の凡作と比べたら観るべきところはあるかもしれないが、やはり1990年代らしい「安っぽさ」や「軽薄さ」が足を引っ張っている。でもヒロインが思いっきり敵に回り、そして同情の余地もガッツリあるという複雑な設定、魅力的な脇役たちなど、現代のクオリティでリメイクすれば結構な名作になる可能性も秘めていると思った。

 

●『シャーロック・ホームズ

 

 

 

ガイ・リッチーは好きな監督だし、続編の『シャドウ・ゲーム』は公開当時に映画館に観に行ってそこそこ楽しんだ記憶があるけれど、この作品はどうにもダメ。ロバート・ダウニー・ジュニアはアイアンマンのときと似たような演技だけどあっちのほうがずっとキャラが深くて濃いし、ヒロインのレイチェル・マクアダムスもあんまり美人ではないし、ワトソン役のジュード・ロウはパッとしないし、敵役のアンディ・ガルシアはあんまり怖くない。アクションとしてもミステリーとしても中途半端だし、当時のロンドンを再現したのかもしれないがモノクロで冷たい感じの画面もどうにもワクワクしないのだ。