ひとこと感想:『地獄の黙示録』
学生時代に観ていて、今回が2回目の視聴。prime videoには「特別完全版」もあったが、さすがに3時間も観ていられないので通常版にした。
全体的な筋がシンプルであるぶん、荒唐無稽で奇想天外で狂気に満ちた各場面を独立して楽しむことができる。ベトナム戦争の舞台がジャングルであったことが幸いして様々な自然風景が描けているし、多種多様な動物が出てくるところも画面のカラフルさに貢献している。砂漠が舞台であるイラク戦争では、ずっと単調で代わり映えのしない画面が続いていたことであろう。
マーロン・ブランド演じるカーツ大佐は、そのキャラクター性も語っている内容も後続の作品に模倣されまくったせいで、貫禄やカリスマ性は流石のものであるとはいえ、いまとなっては陳腐さが漂う。それよりも、ロバート・デュヴァル演じるキルゴア中佐のシンプルな外道っぷりの方が洗練されており、現在でも新鮮さが感じられる存在となっているだろう。
物語の冒頭では有能なプロっぽさを漂わせていた主人公のウィラード大尉(マーティン・シーン)が、キルゴア中佐やカーツ大佐に圧倒されてあっという間に格を失うところも面白い。また、ヒックス(フレデリック・ホレスト)をはじめとする哨戒艇の乗組員たちもいい味を出している。
学生時代にはこの映画の原案である『闇の奥』も読んでいたし、終盤の展開のモチーフとなっている『金枝篇』についても授業で習ったりしたが、その種の前提知識を知っていたところで「だからどうした」という話ではある。そういえばわたしは大学生の頃から「神話学」という授業に対して無性に反感を抱いていて、学生の大半が中二病的な興味関心からその授業を受けるから講義の内容も中二病的な単語知識やトリビアの羅列でOKとされる、という感じが気に食わなかったのだ。いまでもクリエイターとかがしたり顔でジョーゼフ・キャンベルの『神話の力』とか『千の顔をもつ英雄』とかを持ち出すことがあるが、あんなの物語論としても文化論としてもインチキでしかないと思う。