THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『ヒート』

 

ヒート (字幕版)

ヒート (字幕版)

  • 発売日: 2017/03/03
  • メディア: Prime Video
 

 

 先日に『フェイク』や『カリートの道』を再視聴したので、同じく90年代の裏社会や犯罪ものでアル・パチーノが出てくる『ヒート』も再視聴した。この作品ではアル・パチーノは犯罪者ではなく刑事であるが、性格や振る舞いは相変わらずヤクザみたいなものだ。そんな彼が、カリスマ性のありプロフェッショナルな犯罪者であるロバート・デ・ニーロに共感や敬意のような感情を抱いてしまうところがこの映画のキモである。

 

 中盤の銃撃戦が有名であり、BGMの演出も相まって素晴らしい。また、脇役たちもなかなかキャラが立っている。銀行強盗のドライバー役を買って出た人は出番は短いながらも同情を誘うし、ダニー・トレホの末路も衝撃的だ。他にも、基本的に犯罪者勢に共感を誘う作りになっており(ロバート・デ・ニーロの一味に敵対する連中はいかにも悪役で敵役という造形だが)、しかし彼らは犯罪者なのでみんなロクでもないことになる。こういう映画を見ていると「犯罪に手を出したらぜったいにロクなことにならないから、真面目に生きよう」と思わさせられるので教育に良い。一方で、女性キャラクターは一昔前のこういう映画のご多分にもれず人格があってないような存在であり、男性陣にとって都合の良いキャラクターとなっている。

 面白いし名作だとは思うがとにかく長い。3時間半近くある。長過ぎる。話の展開は最初の方ですぐにわかってしまう類のものだし、そこをあえてじっくり描いているのがポイントかもしれないが、90分か2時間もあれば描けるお話だろうという気はする。

 

 しかし、若い頃にはこういう犯罪ものの映画やヤクザものの映画にも食い入るように見ていたのだが、歳を取ると、ヒューマンドラマやカタギの仕事ものや家族ものに比べると、どうにも興味が惹かれないようになってきた。作劇やキャラクター描写などの映画としてのクオリティが高いことはわかるし、そこに感心することはできる。だが、犯罪者の美学とかヤクザの世界の抗争とかを題材にされた作品には所詮は「お決まり」や「作りごと」の域を出ないようなものが多い気がする。なんか観ていてもずっと「他人事」という感じがするのだ。ただし、歳をとって色々と精神的に疲弊して、フィクションのキャラクターに対するわたしの受容度とか共感能力が下がっているという問題もあるだろう。残念なことだ。