THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

『ムーンライト・ドライブ』

 

ムーンライト・ドライブ [DVD]

ムーンライト・ドライブ [DVD]

  • 発売日: 2000/08/25
  • メディア: DVD
 

 

 田舎町に住む主人公(ホアキン・フェニックス)は友人の妻(ジョージナ・ケイツ)と浮気していたのだが、それに気付いた友人が主人公に罪を被せるかたちで自殺してしまう。主人公はなんとか友人の死体を隠蔽しようとするが、友人の妻は主人公を自分のもとに留めておくために別の人物を殺したりしつつ主人公を脅迫する。そんななかで、外部から町にやってきた謎の男(ヴィンス・ヴォーン)と主人公は友達になるのだが、実はこの男はサイコパスの連続殺人鬼で、主人公の友人の妻もこいつに殺されてしまい、今度はこの男が主人公を脅迫することになる…。

 

 けっこう複雑で特殊なプロットのサスペンスなのだが、「複雑で特殊なプロットのサスペンス」というものはうまくいけば名作になる代わりにうまくいかなければグダグダした凡作になってしまうものであり、この作品は明らかに後者だ。サスペンスとしてはまったく大したことがない。ただし、代わりに独特の「ゆるさ」が全体的にあって、数多くの死人が出る話なのに良くも悪くも緊張感が全くない。ところどころのコメディシーンはちょっとだけ笑える。感じとしては、先日に観たジム・ジャームッシュ『デッド・ドント・ダイ』が近いかもしれない。

 脚本の完成度はイマイチだが、ところどころで挿入される自然の風景を贅沢に使った画面は悪くないし、殺人シーンや死体遺棄シーンにすら流れるカントリーミュージックも独特な雰囲気をかもし出していて、良い。また、キャラクターもみんな個性的だ。若かりし頃のホアキン・フェニックスが演じる主人公は真面目さとふてぶてしさが同時に感じられてさすがという感じだし、ジョージナ・ケイツのアバズレっぷりや殺人鬼なのに人たらしで飄々としていて笑い方が特徴的なヴィンス・ヴォーンも印象的だ。そして、物語の中盤から登場する女性FBI捜査官を演じるジャニーン・ガラファローが、「やり手の女捜査官」という設定ながらとぼけていてスキも多く、そこが可愛らしくてよかった。田舎町ならではの無能な保安官助手や、FBI組が田舎警察の捜査の杜撰さに呆れているところなどもいかにもコメディ映画という感じで悪くなかった。