THE★映画日記

映画(たまに漫画や文学)の感想と批評、映画を取り巻く風潮についての雑感など。

ひとこと感想:『心のカルテ』&『キングのメッセージ』

●『心のカルテ』

 

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 摂食障害(拒食症)の主人公(リリー・コリンズ)が、医師(キアヌ・リーヴス)の指導のもと、同じような問題を抱えている若者たちと集まった治療用の施設に行って、そこにいる男子(アレックス・シャープ)と恋愛的な関係になったり、父の再婚相手の義母(キャリー・プレストン)や同性愛者である実母(リリ・テイラー)との関係に悩んだりして……みたいなお話。

 現代は"To the Bone(骨になる)"であるが、邦題はもしかしたら『17歳のカルテ』あたりから取られているのかもしれない。設定もちょびっとだけ似ているような気がするし、主人公のいかにもハイティーンらしい"繊細"な感性を全面に出したナイーブな作劇だって良くも悪くも似ている……と思ってWikipediaを見てみると、主人公が20歳の大学生だったので驚いた。なんというか、あまりにも"繊細さ"や"ナイーブさ"一辺倒な作品なので、ティーンエイジャーたちの物語だと頭から決めてかかってしまっていたのだ。

 また、「なんらかの問題を抱えた若者同士が共同生活する特殊な施設」が舞台という点では『ショート・ターム』『ミスエデュケーション』を思い出した。そして、これらの作品を見たときと同じく、最早おっさんに差し掛かっているわたしはこういう作品を見ても「ご繊細でお可哀想なガキどものお悩みなんて知ったこちゃねえよ」「世界には戦争や貧困で苦しんでいる人がごまんといるんだよ先進国のガキが甘えんな」という気持ちが先立ってしまう(こんなことを言い出したらどんな映画も観ることができなくなってしまうけれど…)。

 これらの作品はどれも登場人物である若者たちの"繊細さ"や"苦悩"に寄り添い過ぎているきらいがあり、そもそも実際に同様の悩みを抱えている観客や同年代の観客(そして、それらの悩みを感じている人にシンパシーを抱いたり"アライ"になりたいと思っているタイプの観客)に向けて作られている感が強く、逆にそういう苦悩に縁遠かったりして"外側"にいる観客の気持ちを惹きつけたり感情移入をさせるような工夫はあまりされていないように思うのだ。たぶん、わたしのような観客はお呼びでないのだろう。それは結構だが、ならばこっちもdisるまでだ。特に面白い作品ではないことは確かなんだし。

 とはいえ、『心のカルテ』もキアヌ・リーブスが出ている場面(だけ)は良かった。さすがの貫禄やカリスマという感じである。

 

●『キングのメッセージ』

 

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 主人公を演じるチャドウィック・ボーズマンを目当てに見て、こういうタイプのスリラーもので主人公がアフリカ系であることが珍しいということもあり、そこは面白く見れた。悪役の歯医者を演じるルーク・エヴァンスの「悪落ちしたジョゼフ・ゴードン=レヴィット」みたいな風貌もいいし、アルフレッド・モリーナも小物っぽさと気持ち悪さを醸し出せていてよかった。

 しかし、映画としてはお世辞にも面白いとはいえない。ちょっと似たような作品として『ドライヴ』があるが、主人公のキャラクター設定や動機付けもシンプルながらしっかりしており印象的な場面も多かったあちらに比べて、『キングのメッセージ』は全てが薄らぼんやりしている。鎖を使ったアクションはちょっとだけ印象的ではあるがそこまで多用されるわけではないし、スリルの描写もいまいちだ。まあ典型的に凡庸で十把一絡げなスリラー作品、という感じ。